北朝鮮、実戦配備へ示威 短距離弾ミサイルか

2020/3/9 19:30
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3月2日の飛翔体発射を指導する金正恩委員長=朝鮮中央通信・ロイター

3月2日の飛翔体発射を指導する金正恩委員長=朝鮮中央通信・ロイター

【ソウル=恩地洋介】北朝鮮が9日、短距離弾道ミサイルとみられる飛翔(ひしょう)体を1週間ぶりに発射した。2019年に発射実験を繰り返した新型ミサイルが実戦配備される段階に入ったとの見方がある。新型コロナウイルスを巡る混乱が北朝鮮内で広がっているとの観測もあり、軍部を引き締めるとともに、指導部の統率能力を外部に誇示する意図もうかがえる。

韓国軍によると、北朝鮮は9日午前7時半すぎ、日本海に向けて種類の異なる複数の飛翔体を発射した。飛距離は最大200キロ、高度は50キロだった。このうち3発は北朝鮮が2日に発射したミサイルに近い特徴があるという。

北朝鮮の報道から判断すると、2日のミサイルは北朝鮮が昨年開発し「超大型ロケット砲」と呼ぶ短距離弾道ミサイルとみられる。飛距離は短いが、連射が可能なことから捕捉や迎撃が難しく、韓国軍や在韓米軍には脅威となる。韓国軍によると、2、9両日ともに発射間隔は20秒と、昨年と比べて能力を向上させた。

韓国軍は2、9両日の発射はともに朝鮮人民軍の冬季訓練の一環だと見ている。2日のミサイルは前線の長距離砲兵部隊の火力攻撃訓練だった。訓練中の前線部隊が発射したことから、専門家からは「実戦配備の段階に入ったとみるべきだ」(金東葉・慶南大教授)と指摘する声が上がっている。

一方、韓国の国防当局は発射の政治的な意味合いについて、金正恩(キム・ジョンウン)委員長が指導力を内部に向けて誇示するためだと分析している。

非核化を巡る米朝協議は停滞し、経済制裁は長引いている。そこに新型コロナウイルスの感染拡大が重なり、市民生活に影響を与えているもようだ。北朝鮮は感染者の発生を認めていないが、公式メディアの報道によると外国人を含めて9000人以上が隔離されている。診断能力の問題から、感染が疑われる患者を次々と隔離している可能性がある。

北朝鮮専門サイトのデイリーNKによると、軍内部では死者も発生しているという。指導部はウイルス流入を防ぐため1月下旬に中国との境界を封鎖しており、モノ不足や物価高騰は深刻な状況にあるとみられる。

経済への打撃を最小化するためには、貿易や建設などの活動にかかわる軍の士気を保つ必要がある。軍内部にはかねて、金正恩氏が18年以降に対米交渉で示した非核化の方針に反発する声が根強かった。韓国軍が米国から購入し配備を進める最新鋭ステルス戦闘機なども脅威を与えている。

米国の反発が小さい短距離弾道ミサイルを発射した背景には、11月の米大統領選に向けた動向など国際情勢を見極める思惑もありそうだ。

北朝鮮は19年末に「クリスマスプレゼントに何を選ぶかは米国次第だ」と挑発するなど米国との緊張を一方的に高めたが、年明け以降は一転して米国に対する直接的な批判を避けている。金正恩氏は3月4日付で韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領宛てに親書を送るなど対話再開への余地も残している。

北朝鮮は過去には米大統領選の前後に挑発的な行動を強めた歴史がある。12年12月にはオバマ政権の2期目入りを前に「人工衛星」と称する長距離弾道ミサイルの発射を予告した。トランプ政権発足前の17年1月には大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試験発射が最終段階にあると金正恩氏が表明していた。

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