スポーツ協賛の効果は? 商品認知度向上、満足は18% - 日本経済新聞
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スポーツ協賛の効果は? 商品認知度向上、満足は18%

スポーツのスポンサーの満足度は高くない?スポンサー企業を対象にした調査でそう示唆する結果が出た。単に競技場に看板を出すだけでは効果は薄い。一方、工夫を凝らして大きな成果を得た企業もある。成否を分けるカギは何なのか。

調査会社のニールセンスポーツジャパン(東京・港)が1月までにスポーツ大会やチームなどのスポンサーを務める国内57社にアンケートを行った。東京五輪へのスポンサー活動は対象外。同種調査は国内では珍しい。

調査では国内の大会などのスポンサーに満足度を5段階で尋ねた。「大変満足」「満足」と答えた割合は「社会的責任・地域貢献ができること」が64%と高い。一方、「顧客との関係性構築」は37%、「自社のイメージ構築・改善」は30%と落ち、「商品の認知度向上」は18%と低かった。

スポーツの協賛金は国内の案件でも年間数億円はざら。出費の割に満足度が低いのはなぜか。カギは「アクティベーション」と呼ばれる活動。スポンサーになることで得た権利を活用して行うPRやキャンペーンを指す。各社にこの費用を尋ねると、平均で協賛金の4割しか使っていなかった。海外ではアクティベーションの費用が協賛金の2.2倍という調査がある。日本では十分な予算が投じられていない。

ニールセンスポーツジャパンの本庄健人副社長は「スポンサーをする目的が不明瞭な企業がある」と指摘する。逆にお金を使う理由さえはっきりすれば、スポンサーの満足度は高まりうる。

好例が不動産大手の三菱地所。2018年にラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会のスポンサーに就くと、協賛金の2倍のアクティベーション費用を用意し、本拠地の東京・丸の内で大型キャンペーンを行った。著名な芸術家にラグビーをテーマにした作品を制作してもらったり、元選手と経営者の対談を開いたりとユニークな催しが目白押し。W杯後には日本代表のパレードも開かれ、丸の内にある同社施設でのラグビー関連イベントへの総来場者数は95万人に達した。

企業の好感度も上がった。同社のテレビCMはCM好感度ランキング(昨年10月後期、CM総合研究所調べ)で4位を記録。従来の最高位116位を大幅に更新した。「W杯関連の活動トータルで効果が出た」と同社ラグビーマーケティング室の高田晋作さんは喜ぶ。

実利を求める企業は環境変化に応じてスポンサー契約の中身も柔軟に変える。保険仲介のエーオンは英サッカークラブのマンチェスター・ユナイテッドのユニホームのロゴの権利を持っていたが、企業の知名度が上がった後は、チームのリスク管理などのスポンサーに転換。業務内容のPRにつなげている。

今後、スポーツの力がより生かされそうな分野もある。調査ではスポーツを通じた「持続可能な開発目標(SDGs)」への取り組みへの関心も質問。興味を持つ企業は70%に達した。労働人口の減少や働き方改革などの社会の変化を受け、本庄氏は「従業員との関係性の構築にもスポンサーの権利は生かせる」とも話す。スポーツ団体の側にも、こうした意識を持って企業と接する姿勢が求められるだろう。

東京五輪が終わればスポーツへの投資は冷え込む。調査では野球などを中心にスポーツの協賛金が減る見通しも明らかになった。日本のリーグ、チームの資金が減れば海外のスターの加入も減り、ファンにも痛手となる。目前の谷を乗り越えるには、企業とスポーツ界双方の意識改革が必要になりそうだ。(谷口誠)

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