インド、イエス銀の預金引き出しを制限 金融不安の拡大阻止

【ムンバイ=早川麗】インド政府は5日夜、インド準備銀行(中央銀行)の申請を受けて、民間大手イエス銀行の預金引き出し額を制限した。4月3日まで5万ルピー(約7万円)に制限される。同行は取引先の経営悪化で不良債権が増加して財務体質が悪化していた。資金繰り改善に向けて資金調達を目指したが実現していなかった。
イエス銀は新規の貸し出しや投資などの活動も禁止された。政府・中銀は、イエス銀が倒産すれば金融システム全体に不安が広がりかねないと判断し、救済を急ぐことにした。
中銀は5日付でイエス銀の取締役の職務を一時停止し、国営インドステイト銀行のプラシャント・クマール最高財務責任者(CFO)を管理者に就けた。今後は中銀が他行との合併も含めてイエス銀の再建を主導していく。インドステイト銀は5日夜の証券取引所への開示資料で「イエス銀への出資を検討することを取締役会で決議した」と明らかにした。
イエス銀は19年9月時点で資産規模で民間5位。不良債権比率は7.4%だった。融資先の大手携帯通信会社などの倒産で貸出金が焦げ付き、この1年ほどで急速に経営が悪化していた。同銀の株価は6日、前日に比べ6割近く下落した。
インドではこの1~2年、金融不安が高まっており、政府や中銀の介入が目立つ。18年10月には多額の負債を抱える大手ノンバンクのインフラストラクチャー・リーシング・アンド・ファイナンシャル・サービシズ(IL&FS)の経営陣を政府が入れ替え、再建を主導。昨秋には中銀が別の大手ノンバンクを破綻処理した。
不良債権の高止まりや金融不安が経済の足かせとなっており、政府と中銀は介入で不安拡大を防ぎたい考えだ。
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