市場急変動、投資マネー委縮の悪循環に 日米株急落
「適温相場」反動大きく

2020/3/6 16:45
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投資家のリスク回避の姿勢が強まった(5日、ニューヨーク証券取引所)=ロイター

投資家のリスク回避の姿勢が強まった(5日、ニューヨーク証券取引所)=ロイター

世界の金融市場の動揺が止まらない。米ダウ工業株30種平均は連日で千ドルを超す急騰と急落を繰り返し、変動率は5日、約8年半ぶりの水準に急上昇した。6日の日経平均株価の下落幅は一時700円を超えた。起点は新型コロナウイルスだが、プログラム売買の普及などで相場の乱高下自体が投資マネーを萎縮させ、さらに売りを招く悪循環に陥っている。低金利下で景気拡大が続く「適温相場」が長かった分、楽観論の反動も大きい。市場が落ち着きを取り戻すにはまだ時間がかかりそうだ。

過去10日間の値動きを統計的に処理した米ダウの変動率は5日、52%(年率換算)を超え、米国債の格下げや欧州不安が強まっていた2011年8月(55%)以来の高さを記録した。

米連邦準備理事会(FRB)は3日、0.5%の緊急利下げに踏み切った。それでも米国株は一向に落ち着く様子はなく、むしろ変動が激しくなっている。「中央銀行が相場の乱高下を制御できなければ、投資家は深刻な株安リスクを警戒せざるをえなくなる」(独アリアンツのモハメド・エラリアン氏)

「機械的に株式などのリスクを落とす動きが出ている」。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の古川真チーフ・ポートフォリオストラテジストはこう話す。古川氏が指摘するのは、変動率が高まると自動的にリスク資産の持ち高を減らす「リスク・パリティ(均衡)」と呼ばれる戦略を採用する投資家からの売りだ。

機械的な売買の一種で、株価が乱高下すると、国債など値動きの小さい資産へ資金を移す。株安がさらなる株安を招く悪循環に陥りやすい。年金基金などで活用が広がっている。

5日に米10年物国債利回りが過去最低の0.8%台に低下(価格は上昇)したのもこの流れだ。古川氏の試算ではリスク・パリティ戦略の運用額は100兆円ほどで、「変動率が高いままなら、月末に大きな売りが出る可能性がある」という。

6日は日経平均株価が前日比579円(2.7%)安の2万0749円と、半年ぶりに2万1000円を割り込んだ。円相場は一時104円台を付け、対ドルで5日夕から2円超上昇した。5日のダウ平均の終値は前日比969ドル安の2万6121ドルだった。4日には1173ドル高を記録した直後で、激しい乱高下が続いている。

長く続いた「適温相場」の反動という面もある。低金利政策と長期の景気拡大で、投資家の間では「株価は急落しない」との慢心が広がっていた。その分、株式などリスク資産の運用を積極化してきた。構図としてはリーマン・ショック前の07年と重なる面がある。

大和証券の谷栄一郎チーフストラテジストは「変動率は一度高まるとすぐには収まらない」とみる。コロナ問題は収束がみえないうえ、ヒトやモノの移動の制限が世界経済に与える影響も定量的な予測が難しい。

谷氏は「市場は世界的な景気後退を織り込んで、パニック的な状況になっている」と見る。パウエルFRB議長も「利下げが感染拡大を抑えられるわけでもなく、寸断された供給網を修復できるわけでもない」と金融政策の限界に言及した。

市場では財政出動を期待する声が高まるが、主要国が迅速に協調策を打ち出せるかはなお不透明だ。株価の乱高下が収まるかどうかは「コロナの感染拡大がいつ収束するか次第だ」(米ジェフリーズのスティーブン・デサンクティス氏)という見方が多い。

ただ、仮に新型コロナウイルスの感染拡大が収束に向かったとしても、投資家がすぐに積極的な運用を再開する可能性は低そうだ。米ダウは2月に付けた史上最高値から12%近く下落したが、その差を埋めるハードルは高くなっている。(ニューヨーク=後藤達也、松本裕子、安西明秀)

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