新型コロナ、企業は開示が課題に 米では当局が業績影響要請

2020/3/5 20:03
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新型コロナウイルスに関連した業績や感染者の情報を、どこまで開示するかが企業の課題になってきた。業績の情報が乏しければ、投資家の不安から株価下落につながりかねない。感染者が出た場合に公表は義務ではないが、ネットなどで暴露されれば評判の低下につながるリスクもある。

米企業では業績への影響の開示が相次いでいる。ゼネラル・エレクトリック(GE)は4日、中国での生産減などで1~3月期にフリーキャッシュフロー(純現金収支)が3億~5億ドル(約320億~540億円)、営業利益が2億~3億ドル減る見通しを発表した。

「現時点で判明している事実に基づくもの」(ラリー・カルプ最高経営責任者)と、足元で確認でき、予想できる範囲で数字を積み上げた。

消費から旅行、エネルギー関連と開示に踏み切る業種は幅広い。背景には米証券取引委員会(SEC)の要請があり、3月末が提出期限の19年の年次決算報告書に「コロナウイルス」と具体名を出してリスクを記載するよう求めた。

SECは投資家が適切な対応ができるよう開示を呼びかけた。米法律事務所エイキン・グループによると、年次決算報告書で開示した会社は、今年1月1日から2月末までに540社に達した。

英国では企業統治などを所管する財務報告評議会(FRC)が2月中旬、新型コロナウイルスが事業に与える影響について投資家への適切な情報開示を検討するよう、企業や監査法人に助言し、蒸留酒大手のディアジオなどが開示している。

国内では東京証券取引所が、従来の適時開示の範囲内で感染拡大の影響がわかれば速やかに開示するよう求めている。

ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」を展開するロイヤルホールディングスは、20年12月期の業績予想で、影響額を売上高で22億円、経常利益で11億円のマイナス要因とした。03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)では業績に約半年響いたため、今回も半年程度とみて試算した。

もっとも現時点では開示した企業は少ない。市場には「情報が少なく困っている」(SMBC日興証券の圷正嗣氏)との声がある。「米国は投資家から訴えられるリスクがあるので企業も反応する部分がある。日本では企業の自主的な判断に任せている」(金融庁)といった違いも大きい。

感染者が出た場合の対応も問われる。「できるだけ公表したくない」とする企業も多い。危機管理に詳しい塩崎彰久弁護士は「感染の実態、対応措置の内容、企業のイメージや知名度、業態、事業に与える影響や資金繰りの状況まで総合的に考えなければならず、難しい判断が求められる」と指摘する。

労働契約法では、一般に企業は従業員への安全配慮義務を負い、感染予防のために必要な措置をとらねばならない。感染者が確認されれば保健所と連携して経路や接触者の範囲を確認し、消毒や同じ職場の従業員の安全確保に必要な対応をとることが求められる。

例えば、賃貸テナントで働く従業員に感染者が発生した場合、企業のオフィスが複数入居しているなら「ビル内での告知などはすべきだろう」(影島広泰弁護士)という。共用部の消毒作業が必要なため、告知しないとビル内での噂や疑心暗鬼を招きかねない。

告知以上の公表に踏み込むかどうかは「企業によって判断が分かれる」(塩崎氏)。顧客の感染も含めて、大井哲也弁護士は「二次被害の防止や内部からのネットへの暴露などのリスクを考えれば、できるだけ速やかに事実関係を公表すべきだと助言している」という。

(ニューヨーク=伴百江、ロンドン=篠崎健太、児玉小百合、太田明弘)

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