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クラシック路線に異変 人気馬不振、盛り上がり欠く

2020/3/7 3:00
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新型コロナウイルス感染の影響で、無観客競馬という前代未聞の体制が続く中、3歳クラシックの前哨戦が本格的に始まる。7日に桜花賞トライアルのチューリップ賞(G2・芝1600メートル)が阪神で行われ、続く8日には、今年から「ディープインパクト記念」の名がついた弥生賞(同・芝2000メートル)が中山で行われる。

チューリップ賞には、昨年の最優秀2歳牝馬レシステンシア以下、有力馬が集まるが、弥生賞は昨年に続いて小粒なメンバーとなりそうだ。かつて弥生賞は文字通り、クラシックの登竜門だったが、近年の3歳有力馬のローテーションの変化の波が及んでいる。一方、1~2月の3歳重賞では1番人気馬が次々に敗れている。軽くなる前哨戦と、人気馬のつまずきの背後には何があるのか?

伝統の弥生賞、今年もG1馬不在

弥生賞はディープインパクト自身も2005年に優勝したゆかりのレース。グレード制が施行された1984年、後の三冠馬シンボリルドルフと、ライバルのビゼンニシキが全勝対決を演じて以来、3歳春のクラシックを占う一戦として注目されてきた。近年でも16年優勝のマカヒキは皐月賞2着後、日本ダービーを優勝。18年2着のワグネリアンも日本ダービーを制した。

だが、昨年は重馬場で施行されたとはいえ、1勝馬が1、2着。2頭にとどまった重賞勝ち馬は、ニシノデイジーが4着、ラストドラフトが7着に沈んだ。もっと気になるのは、出走した10頭から、後にG1路線をにぎわす馬が出ていない点だ。

優勝したメイショウテンゲンはその後にG3で1度の2着があるだけで勝ち星がない。ニシノデイジーとラストドラフトも弥生賞後は勝っていない。2着シュヴァルツリーゼは昨秋に3勝クラスを勝った後、故障で引退。3着ブレイキングドーンは6月末にG3のラジオNIKKEI賞を勝った後は休養中だ。

日本中央競馬会(JRA)が算定するレースレーティングも、17年は113.25、18年が115.5と高かったが、昨年は110.5に落ちた。

かつてなら、弥生賞で注目を集めるような馬は、敗れてもクラシック本番や、後のG1路線で素質を開花させることが多かった。昨年はメンバーの器が小さかった格好。その流れは今年も続く。

弥生賞の登録馬を見ると、重賞勝ち馬は札幌2歳ステークス(G3)を5番人気で勝ったブラックホール1頭。注目されるのは新馬戦6着後、未勝利と1勝クラスの一般戦を連勝したディープインパクト産駒サトノフラッグや、2戦2勝の後、G1のホープフルステークスで3着に入ったワーケア程度だ。

ホープフルSが役割を代行

こうした流れは、JRAが進めてきた2歳戦強化策の結果である。かつて弥生賞が果たしてきた役割を、ホープフルSが代行するようになったのだ。象徴的だったのがサートゥルナーリアで、18年に3戦無敗で同レースでG1初勝利を飾ると、陣営は翌年春の皐月賞への直行を宣言。前哨戦を経ずに皐月賞優勝を果たした。

16年も似たパターンで、レイデオロは3戦無敗で当時G2だったホープフルSを勝つと、直行した17年の皐月賞は5着に敗れたが、日本ダービーを制覇。同馬は調整遅れで前哨戦をやむなく回避したが、サートゥルナーリアは体調に問題がなかった。いわば「予定の行動」だったのだ。

皐月賞とホープフルS、弥生賞は同じ中山・芝2000メートルで行われる。目先の賞金を取りに行く強い意志がない限り、3戦全てに顔を出す必要性が薄いのは確か。それでも、以前は「クラシックを狙うなら、前哨戦に出すのは当然」という考え方が支配的で、出すなら本番まで6週の準備期間を取れる弥生賞が選好されてきた。

しかし、民間牧場の中でも、ノーザンファーム(NF)のように、自前の調教施設を拡充し、美浦や栗東のトレーニングセンターに置かなくても、実戦並みの調教を施せる勢力が現れると、状況は変わってきた。

3戦無敗でホープフルSを制したコントレイルは皐月賞に直行(JRA提供)

3戦無敗でホープフルSを制したコントレイルは皐月賞に直行(JRA提供)

「確信犯」的に前哨戦を回避したサートゥルナーリアの成功は、時代の変わり目を告げる事件で、昨年末のホープフルSを3戦無敗で制したコントレイルも、矢作芳人調教師(栗東)がいち早く、皐月賞直行を宣言した。同馬はNF生産馬でなく、現在も鳥取県の施設で調整されている。NF以外の勢力が同じパターンで成功するかが注目される。

ホープフルSのG1昇格は17年で、これを機に2歳の有力馬は、朝日杯フューチュリティステークス(FS=阪神・芝1600メートル)とホープフルSのどちらを目標に据えるかで分かれるようになった。朝日杯を目指す組は2歳段階で1600メートルに集中するため、3歳の初戦で距離適性を測るために弥生賞を選ぶパターンが多かった。15年の朝日杯優勝馬リオンディーズ、17年優勝のダノンプレミアムが該当する。

だが、今年は芝1600メートルで3戦3勝の朝日杯優勝馬サリオスの皐月賞直行という方針が、馬主側から4日に発表され、今日7日に美浦に戻る予定。これも弥生賞空洞化の一因となった。

年明けの3歳重賞、人気馬総崩れ

2歳G1を制した2頭がそろってトライアルを回避する状況では、クラシックムードは盛り上がりにくい。それに拍車をかけているのが、年明けの3歳重賞での人気馬の不振である。象徴的だったのが、2月16日の共同通信杯(東京・G3)で、単勝1.5倍の圧倒的人気を裏切り4着に敗れたマイラプソディだ。

2歳時にG3のラジオNIKKEI杯2歳ステークス(京都・芝2000メートル)を含めて3戦無敗で、コントレイルとの対決が注目されていたが、その前に初黒星を喫した。当日の雨で渋った馬場、斤量57キロ、初の関東圏参戦と悪条件は多かったが、直線で伸びを欠いて勝ったダーリントンホールに4馬身以上の差をつけられた。武豊騎手も「ただ走らなかった。単なるポカと思いたい」と、敗因を測りかねていて、今後に不安を抱かせる敗戦となった。

共同通信杯を制したダーリントンホール(右)。マイラプソディは圧倒的人気を裏切り4着に敗れた=共同

共同通信杯を制したダーリントンホール(右)。マイラプソディは圧倒的人気を裏切り4着に敗れた=共同

同レース以外に、牡牝混合の3歳重賞は3つ組まれたが、そろって1番人気馬が敗れた。1月に組まれたシンザン記念と京成杯の両G3は、ともに1番人気が1戦1勝の牝馬。先物買いの危険さを示すとともに、トップグループに続く牡馬勢の手薄さを印象づけた。

2月9日のG3、きさらぎ賞(京都・芝1800メートル)では、東京スポーツ杯2歳ステークスで、コントレイルから4馬身差の2着だったアルジャンナがやはり単勝1.5倍の人気で伸びきれず3着に終わった。勝ったコルテジアは8頭中7番人気で、平凡なタイムでの決着だっただけに、コントレイルの評価までも3着アルジャンナと「連れ安」になってしまいかねない。

牝馬限定の2戦も含めて、今年の3歳重賞全6戦で、1番人気はNF生産馬だったが、結果は2、3着各1回のほかは4着以下。それでも、シンザン記念(サンクテュエール)、クイーンカップ(ミヤマザクラ)と、生産馬が2勝して面目を保っている。ただ、豊富な持ち駒を使い分けて、多くのレースを勝とうという目算通りには事が運んでいない。

特に、レース経験の浅い素質馬が、実戦を数多くこなした伏兵馬に敗れるパターンが目に付く。極力、自前の施設に置くために、美浦、栗東の滞在期間を短く設定して、走るレース数も少なくする戦略がうまく機能していない点は、悩ましい流れといえる。

阪神JFを勝ち、最優秀2歳牝馬に選定されたレシステンシアは7日のチューリップ賞で始動(JRA提供)

阪神JFを勝ち、最優秀2歳牝馬に選定されたレシステンシアは7日のチューリップ賞で始動(JRA提供)

牡馬とは対照的に、牝馬のチューリップ賞はG1前哨戦にふさわしい顔ぶれが集まる。昨年12月の阪神ジュベナイルフィリーズ(JF=芝1600メートル)をレコードで逃げ切ったレシステンシアを筆頭に、2~4着馬も参戦。さらに1月のG3、フェアリーステークス(中山・芝1600メートル)を逃げ切り4戦3勝のスマイルカナも加わる。

牝馬クラシックは重賞の数も少なく、有力馬にとっての選択肢が阪神JF→桜花賞の一本道となっているためか。桜花賞が終わると、2400メートルのオークスに向かわない馬もかなり出てくるが、それ以前はすっきりしている。今回の上位馬にサンクテュエール、ミヤマザクラ、阪神JFで1番人気を裏切り(6着)、桜花賞に直行予定のリアアメリアが主役候補を形成しそう。チューリップ賞では、速さ自慢のレシステンシアと、同じ逃げタイプのスマイルカナの兼ね合いが先々を考えても鍵になる。

(野元賢一)

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