サンダース旋風に陰りも 年3兆ドル増税案に根強い批判

2020/3/4 20:04
保存
共有
印刷
その他

サンダース上院議員は低中所得層の支持を得るが、3日の予備選では勢いを欠いた=AP

サンダース上院議員は低中所得層の支持を得るが、3日の予備選では勢いを欠いた=AP

【ワシントン=河浪武史】米大統領選の民主党予備選は3日、バイデン前副大統領が伸長し、サンダース上院議員は勢いをやや失った。「民主社会主義者」を自称するサンダース氏は、教育ローンの帳消しなど過激策を乱発し、経済格差に不満を持つ低中所得層の支持を得る。ただ、年3兆ドル(約320兆円)という空前の増税も提唱。現実路線を好む穏健派には強烈なアレルギーがある。

サンダース氏は3日、地元の東部バーモント州で演説して「この選挙戦は欲張りなウォール街や大企業、製薬会社を打破するものだ」と力説した。前副大統領だったバイデン氏を意識して「政治の支配階級との闘いでもある」とも主張。反主流派としての立ち位置を一段と強めた。

サンダース氏の政策案は「まさに社会主義革命だ」(ワシントンのロビイスト)。民間保険を廃止して政府が医療保険を全面的に運営する「国民皆保険」や、再生エネルギーに巨額投資して2千万人を新規雇用するという「グリーン・ニューディール」などが政策の柱となる。

ただ、その政策コストはまさに青天井だ。グリーン・ニューディールには年平均1.6兆ドルもの費用がかかり、国民皆保険も年1.8兆ドルのコストが発生する。4500万人が抱える教育ローン(約1.6兆ドル)を帳消しにすると主張し、低所得者向けの住宅支援にも2500億ドルを拠出。主要施策の総費用は年4兆ドル超と、連邦政府の予算が一気に倍増する空前の「大きな政府」案だ。

米国はもともと所得税すらない「小さな政府」で建国した歴史がある。中西部や南部の穏健派や保守層は、政府主導の官製経済を毛嫌いする。

サンダース氏の提案は巨額の増税も欠かせず、株式売買に0.5%を直接課税するなど過激策もずらりと並ぶ。法人税率を21%から35%に引き上げ、富裕層にも資産課税などで年4千億ドルの追加負担を要求。増税規模は合計で年3兆ドル近い。10年で1.5兆ドル規模だった「トランプ減税」の20倍もの巨大な税制改革が必要で、対立候補から「非現実的だ」(ブルームバーグ氏)と批判を浴びてきた。

サンダース氏が序盤で躍進したのは、上位1%が全所得の20%を独占するなど、戦後最大の経済格差を争点にしたためだ。同氏は「1%の富裕層のために99%が犠牲になってはならない」と強調。ローンの帳消しなどを前面に出して、経済格差に不満を持つ低所得層や将来に不安を抱える若者層から、熱狂的な支持を得た。ただ「ウォール街の経営者は監獄に入るべきだ。製薬会社も犯罪捜査にかける」と過激な企業批判を繰り出し、穏健派や保守派のアレルギーは一段と強まっていた。

態勢を立て直したバイデン氏は、緩やかな所得再分配を掲げる。インフラ投資の財源として法人税率を現在の21%から28%に引き上げるとするが「国民皆保険」などの大胆な策はとらない。「パリ協定」への復帰や温暖化ガスの排出ゼロなど民主党の基本施策を並べる。「政治革命」と声高に意気込むサンダース氏と異なり、万人受けする現実路線を徹底して敷く。

ただ、バイデン氏の提案は、自らが副大統領を務めたオバマ前政権の政策そのものだ。同政権は巨額のインフラ投資や税制改革を掲げたが、経済政策は「オバマケア(医療保険制度改革)」を除いてほとんど実現しなかった。バイデン氏の穏健路線は、経済格差の是正へ抜本改革を求めるリベラル層には「ゼロ回答」となりかねない。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]