静岡の製紙各社、受注急増 寄付返礼品のトイレ紙も人気
紙・パルプ・紙加工品の出荷額が国内首位の静岡県の製紙各社で、トイレットペーパーやティッシュペーパーなど家庭紙の注文が急増している。新型コロナウイルスの感染拡大で、全国各地の売り場で品切れになっているためだ。同県富士市はふるさと納税の返礼品のトイレットペーパーへの申し込みが殺到している。メーカー各社は「生産能力に問題はない」と消費者に冷静な対応を呼びかけている。

「現在、弊社の直販サイトでは、非常に多くのご注文により出荷業務に大幅な遅れが生じております」。国内のトイレットペーパー市場で15%のシェアがある丸富製紙(富士市)は3日、ツイッターに投稿した。
同社はウェブサイトと電話で商品の直販を受け付けていたが、2月27日と28日の2日間はそれぞれ通常の約30倍の注文を受け、28日午後から受注を停止している。トラックに積載する量を増やすほか、大型販売店がトラックで引き取るため、通常時の2倍以上の量を出荷している日もある。
コアレックス信栄(富士市)は2月26日ごろから受注が増加し、27日から現在まで通常の2倍の注文があった。ただ、昨年10月の増税後に余剰気味だった在庫と工場生産で十分対応できる量で、「供給面に問題はない」(担当者)とみている。

全国の衛生紙の生産量の約3割を占める富士市は、ふるさと納税の返礼品としてトイレットペーパーを採用している。ふだんの申込数は1日あたり100件程度だが、2月28日から3月1日の3日間は1300件の申し込みがあり、23点の掲載を見合わせている。
同市の担当者は「配送に遅れがないか調べている。今後も申し込みが増えれば(ふるさと納税サイトへの掲載を)中止する商品が増える可能性がある」と話している。
家庭紙売り場には冷静な対応を求める張り紙が出され、一時期の混乱は収まりつつあるが、静岡市内のドラッグストアの従業員は「(トイレットペーパーがなくなるという)デマを信じていなくても、『デマを信じて買いだめる人が出る』と見越して買い求める人が多い」と話す。女性用の生理用品でも同様の現象が起こり始めているという。
静岡県のパルプ・紙・紙加工品製造業の出荷額(2017年)は8333億円で国内市場の11%を占めた。富士・富士宮地域は全国屈指の家庭紙の生産地として知られる。