南ア長期の停滞 電力不安、民間部門のかせに
国債格下げリスクも

2020/3/4 2:14
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【イスタンブール=木寺もも子】南アフリカ経済が苦境にあえいでいる。政府統計局が3日に発表した2019年の実質国内総生産(GDP)は前年比0.2%増にとどまった。不安定な電力インフラが民間部門の足を引っ張った。電力問題の解決は見通せず、20年以降も低成長が続きそうだ。国営企業の救済で政府債務が膨らみ、同国債が投資不適格級に格下げされるとの観測もある。

停電中、手元の明かりで作業する鍵屋の従業員(2月2日)=ロイター

19年10~12月期の成長率は前期比年率で1.4%減と2四半期連続でマイナスを記録し、景気後退に入ったもようだ。農業(7.6%減)、建設業(5.9%減)、小売り(3.8%減)など1~3次産業すべてがマイナスになった。

主因は不安定な電力供給だ。12月には全国的な大規模停電が1週間以上にわたって起きた。主要産業の鉱業で大手鉱山会社が操業の一時停止に追い込まれたのを始め、幅広く企業活動が停滞した。停電は頻発しており、同国の科学産業研究評議会(CSIR)の報告書は、停電による19年の経済損失が最大で1200億ランド(約8200億円)に上ったと試算する。

停電の原因は、電力需要の9割超をまかなう国営電力会社エスコムの機能不全だ。ズマ前大統領時代にはびこった汚職と放漫経営で4500億ランドもの負債を抱え、老朽化した火力発電所の設備更新などが滞っている。対策のメドは立っておらず、CSIRは今後2~3年は問題が続くとしている。

経済協力開発機構(OECD)は2日、20年の成長率の見通しを0.6%、21年を1%と、19年11月時点からいずれも引き下げた。輸出入ともに最大の貿易相手国の中国を中心に感染が広がる新型コロナウイルスも逆風になるとみられる。

ラマポーザ大統領は2月の施政方針演説で電力問題に対処するため、再生エネルギーの活用などの方針を示したが、具体策は示されなかった。与党内の対立で改革のメドが立たず、不透明感から民間投資が伸びにくい構造も続く。

苦境の南ア経済に立ちこめる新たな懸案は、3月に予定されている米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスによる格付け見直しだ。同社は主要格付け会社の中で唯一、南ア国債を投資適格級としているが、2月に発表したリポートで20~21年の成長率予測を下方修正したことなどから、投資不適格級への格下げ観測が強まっている。

エスコムをはじめとする国営企業の救済が重荷で、政府債務はGDP比62%に達しており、今後も増え続ける見込みだ。格下げを避けたい政府は2月、公務員の賃金を3年間カットする歳出削減策を打ち出した。ただ労働組合は激しく反発しており、実現は不透明だ。ムーディーズが格下げに踏み切れば、資金流出によってランド安が加速する恐れがある。

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