鴻海、1~3月期売上高15%減の見通し 新型コロナで

2020/3/3 21:30
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鴻海は中国で巨大な製造網を築いている(広東省深圳の工場)=ロイター

鴻海は中国で巨大な製造網を築いている(広東省深圳の工場)=ロイター

【台北=伊原健作】電子機器の受託製造サービス(EMS)世界最大手である台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は3日、2020年1~3月期の売上高が前年同期に比べ、15%程度減る見通しだと発表した。新型コロナウイルスの感染拡大の影響が大きく出る。主力の中国の生産拠点で従業員の確保が難航し、現在も需要に対する工場稼働率が半分程度にとどまることが響く。世界の電気製品の生産を支える多くの台湾企業も今後、正念場を迎えそうだ。

鴻海が、3日午後に開いた投資家向けの電話会議で明らかにした。その中で経営トップの劉揚偉董事長(会長に相当)は、主力の中国工場の稼働率について「需要に対し、50%強しか確保できていない」と語った。

その上で、スマートフォンやサーバーなど全売上高の95%を占める主力事業で「(1~3月期の売上高が前年同期比)15%以上の減収になりそうだ」との見通しを示した。残る売上高の5%を占める部品などの非中核の事業でも、10%強の減収を見込むという。

このままの状況が続けば、鴻海が供給する人気の米アップル製品など、店頭では品薄状態を招く悪影響は避けられない。

鴻海は中国各地の工場から米アップルのスマホなどの製品を世界市場に大量出荷している。通常時は、現地で70万~100万人程度の従業員を雇用するとされる。ただ、新型肺炎の感染拡大防止に向けた道路封鎖や、行動制限で従業員の雇用確保に支障をきたしている。部品などの調達にも支障が出ているもようだ。

一方、劉氏は3月末までには中国工場の稼働が正常化するとの見通しを示した。そのため、売上高は「4~6月期に急回復し、1~6月期(上半期)では前年同期並みに回復する」という。ただ、欧米などにも感染が拡大し、電気製品を中心とした需要そのものが落ち込めば、業績に与える影響は「予測がつかない」と語った。

鴻海が生産するスマホをはじめ、パソコン製品など電気関連製品の生産状況は、1月から環境が一変した。多くを台湾や中国企業が担う。そのため2月に入り、米アップルやマイクロソフトは、鴻海など大手委託先の生産停滞を理由に、1~3月期の業績が目標未達となると表明していた。

鴻海は中国で100万人近くを雇用をしている(広東省深圳市内の工場)=ロイター

鴻海は中国で100万人近くを雇用をしている(広東省深圳市内の工場)=ロイター

例えば、鴻海は年間売上高の約5割を米アップル向けの製品が占める。アップルでは今春にも廉価版の新型iPhoneの発売が見込まれ、鴻海は2月後半から製品を本格的に出荷する見通しだった。だが、iPhone生産が主力の中国の河南省鄭州の工場などでは生産が停滞する。出荷には遅れが出そうだ。

大手シンクタンクの台湾経済研究院の曽俊洲・研究員は、新型ウイルスによるサプライチェーンの分断について「部品などの供給面よりも工場従業員の不足による影響が大きい」と指摘する。鴻海は中国で100万人近くの従業員を抱える。集中生産、労働集約による大量生産を追求してきたが、そのビジネスモデルを今回直撃した格好だ。

鴻海以外にも、世界の電気製品の大量生産を担う台湾企業の間では、懸念の声が相次ぐ。

電源装置などを手掛ける光宝科技(ライトン)でも中国工場の生産が停滞し、「1~3月期は2~3割の減収になる」(陳広中・最高経営責任者=CEO)。タッチパネルの宸鴻光電科技(TPK)幹部も、中国工場の労働力確保が難航し、部材の調達不足もあり、1~3月期は17%の減収になる見込みだという。

半導体受託生産の世界最大手で、業績が好調だった台湾積体電路製造(TSMC)も今後影響を受けそうだ。台湾生産が主力だが、サプライチェーンが今後、さらに分断すれば部品供給で連携体制が崩れ、生産の停滞を招き、影響は避けられない。昨年まで上昇が続いた株価も1月に下落基調に転じた。

鴻海の劉揚偉董事長。今後、経営の厳しいかじ取りが求められる(1月、台北市内)

鴻海の劉揚偉董事長。今後、経営の厳しいかじ取りが求められる(1月、台北市内)

IT業界では、スマホ需要は昨年まで低迷していたが、今年は次世代通信規格「5G」に対応した新型スマホの出荷が本格化し、需要の大幅増を期待する声が多かった。ただ現状では、新型肺炎がその需要に影を落とす状況だ。こうした見方が広がる中、劉氏は3日の電話会議で「5Gの発展には自信があるし、顧客の製品開発に遅れは出ていない」とした。さらに「ウイルスによる影響は主に1~3月期だけで短期的だ」とも強調し、強気に語った。

サプライチェーンの混乱で、世界では中国での生産集中のリスクが、より強く意識されるようになっている。米中貿易戦争や人件費の高騰を受け、中国からの生産シフトの動きがさらに加速するとの見方も出ている。こうした見方に対し、劉氏は電話会議で「鴻海は(今回の新型肺炎の影響で中国からの生産移転を加速するなど)特段の新しい計画変更は予定していない」と語った。

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