マレーシア中銀、連続利下げ 政治混乱、市場の動揺に対応
【クアラルンプール=中野貴司】マレーシア中央銀行は3日の金融政策委員会で、政策金利を年率2.75%から2.5%に引き下げることを決めた。利下げの決定は前回1月に続いて2会合連続で、政策金利は約10年ぶりの低水準となる。世界的な新型コロナウイルスの影響に加え、マハティール前首相の辞任に端を発した政治混乱が株安や通貨安に拍車を掛けていることに対応した。
中銀は3日の声明で新型コロナがアジア域内の生産活動や旅行を途絶させているとして「特にマレーシアの20年1~3月期の成長率に及ぼす影響は大きい」と指摘した。投資家は安全資産に逃避する傾向を強めており、資本流出に歯止めを掛けるには政治の安定回復が最低条件となる。
マレーシアも新型コロナの影響で電機や石油化学など主力の輸出産業が打撃を受けており、成長率の低下が避けられなくなっている。政府は2月27日、20年の実質成長率が3.2~4.2%と、10年ぶりの低成長だった19年(成長率は4.3%)を下回る見通しだと発表した。
マハティール氏の首相辞任後、海外投資家が「マレーシア売り」を加速している点も大きい。2月最終週の海外投資家の株式の売越額は12億6千万リンギ(約330億円)と88週ぶりの流出規模となり、主要株価指数は11年12月以来の安値圏に沈む。通貨も2月下旬、一時17年11月以来のリンギ安を記録した。
政府は経済への打撃を抑えるため、観光関連産業への支援や大規模な公共事業の実施など総額200億リンギの経済対策を打ち出した。中銀も金融政策によって、政府と足並みをそろえる姿勢を鮮明にし、資本流出に歯止めをかけたい考えだ。
英調査会社キャピタル・エコノミクスのアレックス・ホルムズ氏は「200億リンギの経済対策では成長率の急落を回避することはできず、中銀は次回会合が開かれる5月にも、再利下げに踏み切るだろう」と予測する。