新型コロナで大学国際化にブレーキ 留学や学会中止

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2020/3/4 2:00
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新型コロナウイルスの感染拡大で、日本の大学の国際化にブレーキがかかり始めた。外国人留学生の受け入れや、国内の在学生の海外留学・研修の取りやめが続出。日本で開催予定だった国際学会が延期されるなど、研究面への影響も広がる。各大学は留学予定だった学生のケアや交流事業の見直しなど対応を急いでいる。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、留学などへの対応を知らせる甲南女子大学のウェブサイト

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、留学などへの対応を知らせる甲南女子大学のウェブサイト

甲南女子大は2020年度に半年~1年間、中国と韓国の留学生計5人を受け入れる予定を中止した。「感染拡大の防止、学生の安全確保のために決断した。日本全国で国際交流が難しくなっているのではないか」(同大)と危惧する。

関西大は2月に中国、韓国、台湾などから学生を招いて日本語を教えるプログラムを用意していたが参加者のキャンセルが相次ぎ、見送りを決めた。関西大に1週間滞在して研究する予定だったタイの理工系研究者も来日を取りやめた。

担当者は「いつ感染拡大が収束するかは見通せない。その時々の状況に対応していくしかない」と長丁場を覚悟する。

日本人学生の派遣も続々と見送られている。立命館アジア太平洋大(APU)では、2月に学生を中国の大学に送る計画が中止となった。行き先の大学は感染が拡大する湖北省などではないが、先方から「授業がいつ再開になるか分からず、受け入れられる状態ではない」と申し出があった。

APUは学生の5割を留学生が占める。広報担当者は「春休み中でもあり、人の往来や国際交流事業にはさほど支障が出ていない」と話す。一方で「国内外で感染が拡大しており、影響が今後出てくる可能性は否定できない」と警戒を強める。

新潟大も春休みに予定していた学生の語学研修や短期の留学プログラムが相次ぎ中止に。海外の計24の大学などで実施を予定していたが、17校が見合わせ、約130人の学生の派遣が取りやめになった。

新潟大の判断で派遣を中止した国がある一方、派遣先の大学の意向で取りやめになったケースも出た。シンガポールや台湾、タイなどアジアが中心だが「英国、フランスでも急きょ中止された」(留学交流推進課)など欧州方面のプログラムにも影響が広がっている。

清泉女学院大・短大も2月に予定していた学生の海外研修を中止した。計20人程度の学生がオーストラリアでの語学研修やカンボジアでの文化交流をする予定だった。

上智大ではイオンとイオン銀行の協力で、2~3月に国内とベトナムで実施予定だった学生による店舗などでのインターンシップを見送る。現地政府の勧告を受けて両社が自粛を決めた。参加する学生5人には両社が国内の事業所での研修プログラムを用意する。

国際学会の中止も相次ぐ。循環器専門の大学研究者らがアジア中から集まる国際学会「APSC」は3月中旬に京都で開催が予定されていたが、夏ごろまで延期となった。同時開催の国内の基幹学会「日本循環器学会学術集会」と合わせ、国内外から約1万8千人の参加が見込まれていた。

運営事務局の担当者は「多くの学会が雪崩を打つように中止されている」と研究の遅れにつながらないか心配していた。

情報技術(IT)を活用して交流の停滞を防ぐ動きも出始めた。

中国や韓国の大学と提携し、学生が2つの大学の卒業資格を得られるダブルディグリー(共同学位)制度を導入した東京海洋大。制度や教育の改善を図るため、定期的に3校の教職員が議論する協議会を開いてきたが、3月4日の会合は参加者の多くから「日本に行けなくなった」と連絡があり、中止となった。

代わりにメールやビデオ通話で意見交換する検討を始めた。担当者は「学生の直近の状況を把握し、より良い教育を目指す大切な会議。できれば顔を直接合わせて話したいが、様々な方法を模索して影響を抑えたい」と話している。

(佐野敦子、松添亮甫、下村凜太郎)

■「留学生30万人計画」に狂いも
 政府は2008年に「留学生30万人計画」を決定し、海外からの留学生を積極的に受け入れてきた。新型コロナウイルスの国内での感染拡大に歯止めがかからなければ、計画に狂いが生じる可能性がある。

 日本学生支援機構によると、18年5月時点で国内にいる留学生は29万8千人と前年同期比で12%増えた。5年前(13年)の1.8倍だ。受け入れが最も多いのは日本語教育機関(約9万人)で、大学(学部)は約8万4千人、大学院は約5万人。出身地では中国が11万4千人、ベトナムが7万2千人を占める。
 日本から海外に渡った日本人留学生も17年度に約10万5千人となり、5年前から約4万人増えた。政府が奨学金制度を拡充したり、カリキュラムに組み込む大学が増えたりしているためだ。
 留学生の獲得はキャンパスの多様性を高め、教育や研究の水準を向上させるのに不可欠とされる。国内の大学は、18歳人口の減少を受け、学生を世界各地から集める必要にも迫られている。
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