中東難民、再び欧州へ流入 トルコが越境容認、シリア問題で支援要求

2020/3/3 17:01
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ギリシャ国境近くに来たシリア難民ら(2日、トルコ北西部エディルネ)=ロイター

ギリシャ国境近くに来たシリア難民ら(2日、トルコ北西部エディルネ)=ロイター

【イスタンブール=木寺もも子】中東から欧州に再び難民が押し寄せている。トルコが欧州連合(EU)との国境を開き、流出を容認しているためだ。背景にはシリア北西部で激化するアサド政権軍との戦闘から距離を置く欧州へのいらだちがある。EUとの協定に従い難民の渡欧を抑えているのに見返りが少ないとの不満を募らせており、難民増加をちらつかせてシリア情勢の好転に向けた譲歩を引き出す狙いだ。EUは4日、緊急の内務相会合で対応を協議する。

ロイター通信によると、ギリシャ東部の島々には1日以降、少なくとも計1千人の難民が到着した。シリア、アフガニスタンなどからトルコを経由したもようだ。トルコのソイル内相は3日、すでに13万人を超える難民が陸路でギリシャ入りしたとツイッターで明らかにした。ただ、ギリシャ政府は大規模な越境の事実を否定している。

2日には難民を乗せた船がギリシャ東部のレスボス島沖で転覆し、シリア難民の子ども1人が死亡した。ギリシャ、ブルガリアの両政府はそれぞれ、トルコとの国境付近に治安部隊を派遣。催涙ガスを使い、難民の越境を阻もうとしている。

トルコのエルドアン大統領は2日、ブルガリアのボリソフ首相とアンカラで会談した後の記者会見で、ギリシャ兵が難民2人を殺害したと語った。同日のテレビ演説では「(国境の)門は開いている。(欧州は)応分の負担をすべきだ」と強調した。

難民流出の動きは2月末、トルコが難民に陸路や海路で欧州に移動することを認める方針を決めたという同国政府高官の発言が引き金になった。この直前、シリア北西部のイドリブ県では駐留するトルコ軍がシリアのアサド政権軍の攻撃を受け、30人以上が殺害された。

アサド政権軍はロシア、イランの支援を受け、シリア内戦で優勢となっている。アサド政権と対立する反政府勢力を後押しするトルコが対抗するには北大西洋条約機構(NATO)の同盟国でもある欧州各国の助けが必要だ。5日にはシリア情勢を巡り、エルドアン氏がモスクワでロシアのプーチン大統領と会談する。その前にEU側から支持を引き出したい考えだ。

トルコが引き受けている難民はシリアからだけで約360万人。ほかに少なくとも数十万人にのぼるとみられる。さらに足元でシリアが混乱し、新たに多数の難民がトルコへの越境をうかがう。トルコの有権者は難民の過剰受け入れを非難する声を高め、エルドアン政権の足元を揺さぶる。

中東から欧州を目指す難民の途上にあるトルコは2016年、EUと難民抑制で協力する協定を結んだ。トルコが難民を国内にとどめるかわりにEUがその費用を支援するという「取引」が軸だった。だが、トルコ側はかねて約束が履行されていないと不満を表明していた。

EUは15年、中東やアフリカから100万人以上の難民を受け入れ、加盟各国の政府は有権者から批判を受けた。政界では移民排斥を掲げるポピュリズム(大衆迎合主義)勢力が伸び、英国のEU離脱の遠因になった。

EUのフォンデアライエン欧州委員長は2日の記者会見で、難民が集まるトルコとの国境付近を3日にギリシャ側から視察すると明かした。同国のミツォタキス首相、EUのミシェル大統領、サッソリ欧州議会議長も同行する。ギリシャへの支援策を協議する方針だ。

フォンデアライエン氏はシリア問題に直面するトルコの事情に一定の理解を示したが、難民を欧州に送り出すという決定は「解決につながらない」と指摘した。ドイツのメルケル首相も2日、記者団に「難民を使った不満の表明は受け入れられない」と言明した。

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