新型コロナが要因に 世界の株式相場はなぜ下がった
株価はなぜ動くの?(上)

2020/3/8 3:00
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新型コロナウイルスの感染拡大が世界の株価に影響(ニューヨーク証券取引所)=ロイター

新型コロナウイルスの感染拡大が世界の株価に影響(ニューヨーク証券取引所)=ロイター

「新型コロナウイルスの影響で株式相場が大荒れだなあ……」。筧家ではニュースを見ていた良男がため息をつきました。満が「ちょっと前まで米国は絶好調だったのにね」と返します。「これほど急変したきっかけは何だったのかな」。良男は首をひねりました。

筧(かけい)家の家族構成
筧幸子(48)良男の妻。ファイナンシャルプランナーの資格を持つ。
筧良男(52)機械メーカー勤務。家計や資産運用は基本的に妻任せ。
筧恵(25)娘。旅行会社に勤める社会人3年目。
筧満(15)息子。投資を勉強しながらジュニアNISAで運用中。

幸子 世界中で株価が下落しているわね。日経平均株価は約半年ぶりに2万1000円を割り込んだわ。

良男 1月下旬に大きく下げた後、いったん持ち直したけれど続かなかったな。

幸子 1月下旬といえば、1月25日に中国政府が国内の旅行会社に海外への団体旅行を中止するよう命じたときね。景気への影響が警戒され、日本でもインバウンド(訪日外国人)関連株がずいぶん売られたわ。

 でも米国株はその後に過去最高値を付けたよね。

幸子 よく知ってるわね、満。当時は新型コロナの影響は大きくならず、米国の景気が拡大して企業の業績が改善するとの見方が強かったのよ。「今後株価が上がりそうだから株を買いたい」という人が、「売りたい」人よりも多かったというわけね。

良男 それがどうして逆になってしまったんだ。

幸子 市場関係者が注目する企業の購買担当者景気指数(PMI)が悪化したことがきっかけの1つよ。指数を算出するIHSマークイットが2月21日、2月の米国の「総合PMI」が好不況の分かれ目の50を下回る49.6になったと発表したの。6年4カ月ぶりの低水準で、1月(53.3)と比べても大きく低下したことで「新型コロナの企業業績への影響は大きい」との見方が広がったわ。さらに韓国やイタリアで感染が急拡大したことも重なって、米国、アジア、欧州で主要な株価指数が下落し、3連休明けの日本市場でも大幅安になったの。

PMIってそんなに大事な数字なの?

幸子 ある国に投資をしようと考える時に重視されるマクロ経済指標には、国の経済規模を表す国内総生産(GDP)や個人消費、雇用などいろいろあるけれど、PMIは毎月の景気動向をいち早く伝える数字と考えられているの。GDPの動きに先行することもあるわ。2020年の世界のGDP成長率は持ち直していくとの予想が多かったけれど、国際通貨基金(IMF)を筆頭に、新型コロナの感染拡大を理由に予想を引き下げる動きも相次いでいるの。

良男 経済成長が鈍化すれば、企業経営には厳しい環境になりそうだな。

幸子 株価にも影響することなるわ。各国の政策や政治情勢が株価に与える影響もあって、2019年は米中貿易摩擦の問題が景気を下押しすると考えられて、株価の下落要因になったの。今年1月に"休戦協定"となる「第1段階の合意」が成立して、警戒が和らいでいたわ。日米欧の中央銀行による金融緩和も続くとみられていて、20年はいよいよ景気や企業業績という実体経済が回復するとの期待が強まっていたから、その反動も大きく出ていそうね。

 ちょっと待って。金融緩和があるとなぜ株価が上がるの?

幸子 お金を借りるときに支払う利子が低下すると、企業や個人が金融機関から安く資金を調達できて、投資に回せるようになるからよ。比較的安全な資産とされる国債から、リスク資産の株式にお金が回りやすくなるの。ついでに言うと、金利の動向は為替にも影響するわ。米国の金利が上がって日本が下がれば、米ドルを買って日本円を売る動きにつながって円安・ドル高の要因になるのよ。日本の輸出関連企業にとってはプラスに働くことが多いわ。ただ最近は米国の金利が下がるとの見方から円高・ドル安になってきて、日本株には逆風よ。

良男 金融緩和があっても、今は株を買いたいという人は少なそうだな。

幸子 日本株を売買する投資主体は7割が海外投資家なの。大きく分けると、年金など長期で投資する主体と、ヘッジファンドなど短期で売買を繰り返す主体があるわ。東京証券取引所が発表する投資主体別の売買動向をみると、海外投資家は今年に入って売り越しの傾向にあって、2月第3週(17~21日)も353億円の売り越しだったわ。相場が急落した第4週はもっと売りが大きくなった可能性があるわね。

 そうなると買っている人は誰なの?

幸子 日本では個人は相場が下がれば買う「逆張り」の投資家で、海外投資家とは逆の動きをすることが多いの。それ以外にも金融緩和策の一環として上場投資信託(ETF)の買い入れを続ける日銀や、最近では事業会社の自社株買いも目立つわ。どちらも株価が下がったときに買うので、相場の一定の下支え効果は見込めそうよ。ただ、本格的な回復は、海外投資家が買いに転じるまで見込みにくいわ。

良男 相場は下がったら買いというけれどな……。

幸子 02年11月に重症急性呼吸器症候群(SARS)の症例が見つかって感染が広がったときにも株価が下落し、底打ちするまでに半年近くかかったわ。03年7月に世界保健機関(WHO)の終息宣言もあって株価は回復したけれど、今回はどれぐらいの期間がかかるのか、今は誰もわからないわね。

■成長企業、個別に見極め
三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフ投資ストラテジスト 藤戸則弘さん
 日本株の下落が続いてます。新型コロナの感染拡大による景気悪化への懸念が引き金ですが、それ以前にも、主要株価指数である日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)は、米欧株が最高値をつけていたのと比べ、伸び悩んでいました。
 年金資産などを預かる海外の機関投資家が長期の視点で投資をする際に重視するのは、その国の成長性です。具体的には10年単位で人口動態を見ており、少子高齢化が急速に進む日本は伸びしろが少ないと考えられている可能性があります。マクロ経済でみると「買い」の材料は少なくても、ミクロの視点では成長性のある企業は存在し、株価も好調です。世界標準でみて中長期で成長できるビジネスモデルがある企業を見極めることが重要です。
(聞き手は成瀬美和)

[日本経済新聞夕刊2020年3月4日付]

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