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差別耐え、仏で成功 ハンドボール・土井レミイ杏利(下)

2020/3/8 3:00
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土井レミイ杏利(大崎電気)は自らのハンドボール人生を「ミラクル」「シンデレラストーリー」と表現する。生まれ育った千葉で小学生のときに競技を始め、埼玉・浦和学院高、日体大と強豪校を歩んだキャリアを、膝のケガで大学卒業と同時に一度諦めた過去があるからだ。

フランスの名門チームを離れ、日本代表をけん引する

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失意の中、将来を考えて語学留学で渡ったフランス。父の祖国で突然、光は差した。しばらくすると膝の痛みが消えたのだ。「なぜかは今もわからない。病院にもあえて行かなかったから」と土井は笑う。再び走れるようになった体は、自然とハンドボールを求めた。縁あって地元クラブのBチーム(若手主体の2軍)の練習に参加させてもらうようになる。最初は趣味程度のつもりだったが、プレーぶりが監督の目に留まり、国内3部リーグの試合に出るようになった。

そして、1年の留学期間を終えて帰国の日が近づく中、クラブからプロ契約の打診を受けた。「もう震えましたね」。そう振り返るのは、ただのクラブではなかったからでもある。

契約したシャンベリは国内リーグで常に優勝争いする名門だった。土井が渡仏した2012年、フランス代表がロンドン五輪で北京に続く連覇を達成。チームには金メダルを勝ち取った代表選手が何人もいた。「ホームステイ先のテレビで見ていた人たちと一緒にプレーするなんて、信じられない気分だった」

望外の環境ではしかし、心が塞ぐつらさも味わわされた。チームに加入して数カ月後、中国人に対する蔑称を浴びせられ、いじめが始まった。フランス人の血は流れているが、日本の体育会の上下関係で生きてきた土井にとって第2の祖国はやはり異国だった。「実績のあるチームメートをリスペクトし、自分を卑下しすぎた。向こうの人間は自分というものがない人間を仲間に入れない」。土井がたまった感情を爆発させ、仲間として認められるまで2年近くかかったという。

2季目(14~15年シーズン)はチーム最多の25試合に出場。4季目には外国人選抜としてオールスターゲームにも選ばれた。その後、2部のシャルトルに移籍し、18~19年シーズンでは優勝。1部昇格を置き土産に、大学卒業以来7年ぶりに日本に戻ってきた。

誇れる戦歴もタフな記憶もプロハンドボーラーとしての血肉になっている。そして30歳になった今、「僕の後に続く選手が出るように」と経験の全てを日本代表にささげる覚悟だ。東京五輪で、もう一つミラクルを起こすためにも。=敬称略

(山口大介)

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