中国・海航集団、経営に政府関与 巨額債務で再建困難に

2020/3/2 22:39
保存
共有
印刷
その他

新型コロナウイルスの影響で、主力の航空事業が打撃を受けた(海南航空の航空機)

新型コロナウイルスの影響で、主力の航空事業が打撃を受けた(海南航空の航空機)

【広州=比奈田悠佑、北京=多部田俊輔】中国南部の海南省は同省を拠点とする複合企業、海航集団(HNAグループ)の経営再建に関与することを決めた。同社は海外企業への出資や買収で急成長したが、巨額の負債や香港デモの影響で経営が悪化し、さらに新型コロナウイルスの感染拡大で主力の航空事業が打撃を受け、立ちゆかなくなった。

「『自力救済』を進めてきたがリスクを完全に解消できなかった」。海航は2月29日、海南省が同社の再建を進める専門チーム設置を決めたことを受け入れ、政府系投資会社と海南省経済開発区の幹部を取締役として選任したことを明らかにした。

これまで経営難に陥った海航を国営化するとの見方も浮上していたが、海航の経営に政府が関与する体制が固まった格好だ。グループの中核上場子会社で航空大手の海南航空は、海航から「決して(政府による)企業接収ではない」と説明を受けたとしている。

米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは2日、海航の流動性問題の緩和などにつながると評価した。中国の地方政府幹部は「政府の支援獲得がはっきりしたことはプラスだ」と指摘した。海南航空の株価は2日、前日に比べ2%余り上昇した。

海航は1993年に運航を開始した航空事業を中心とする複合企業。不動産や物流など事業を多角化するなか、海外企業へ相次ぎ出資した。2016年から17年にかけてはドイツ銀やホテル大手の米ヒルトン・ワールドワイドに次々と出資した。多くの不動産や物流事業などの買収にも踏み切り、17年12月期の売上高は5期前の10倍以上に膨らんだ。

買収で世界に名をとどろかせた裏で、負債は同年半ばに12兆円にまで積み上がったとされる。中国政府は海航のように借り入れを膨らませ、海外買収を繰り返す事業モデルへの警戒を強めていった。国外の経済危機などによる資産価格の下落が、中国の金融システムに大きく波及することを恐れたためだ。

実際、中国の銀行監督当局は17年6月、M&A(合併・買収)で急膨張した不動産大手の大連万達集団や安邦保険集団の信用リスクを調査するよう銀行に指示。欧米の金融機関もこうした中国企業の財務体質を問題視し、取引を控えるなど締め付けを強めた。

万達はホテルやテーマパーク、百貨店など1300億元を超す資産の売却に追い込まれた。安邦は創業者の経営トップが逮捕された。中国政府の管理下に入り、事業は大きく整理・縮小された。

海航も従来の拡大路線が行き詰まり、18年12月期に最終赤字に転落。ドイツ銀やヒルトンの株式を含む海外資産を相次ぎ手放し、19年には傘下の格安航空会社(LCC)、香港エクスプレスを売却した。19年夏に始まった香港のデモで旅客が急減し、系列の香港航空で従業員への給与支払いが遅れるなど苦境は続いた。

追い打ちをかけたのが新型コロナウイルスの感染拡大だ。海南航空の20年1月の旅客数は前年同月比で35%減り、経営がさらに厳しくなった。海航を創業した陳峰・董事長は習近平(シー・ジンピン)国家主席の盟友、王岐山(ワン・チーシャン)国家副主席と親しいとされる。北京の関係者は「政治的な背景から、接収ではなく政府が再建を支援する形になったのだろう」とみる。

海航は2月29日の声明で「新型肺炎の流行が積み重なり、リスクが悪化した」と述べた。今後は海南省政府と共に、一段の資産や事業の整理に動くとみられる。航空事業の縮小も避けられない見通しだ。

航空は規模がモノを言う業界でもある。航空機や燃油の調達は量が多いほどコスト面で有利に働く。国際航空運送協会(IATA)によると、海南航空の18年の旅客数は4226万人。中国大手の中国南方航空(1億397万人)、中国東方航空(9561万人)との差は大きい。

海航の航空事業を巡っては分割して大手へ譲渡するといった臆測も広がっている。構造的な経営問題に加え、香港のデモや新型コロナによる市況悪化と、海航の再浮上は簡単ではない。

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]