新型コロナ、進まぬ検査 機器の活用や調整に不備

2020/3/1 22:31
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新型コロナウイルスの検査に使う装置=岐阜県保健環境研究所提供・共同

新型コロナウイルスの検査に使う装置=岐阜県保健環境研究所提供・共同

新型コロナウイルスの検査で、政府は「1日で約3800件が可能になった」と説明したものの、実際に検査を行っているのは1日平均900件で4分の1にとどまる。政府の説明不足に加え、感染症対策として国などが行う「行政検査」の"パンク"を恐れ、医師からの依頼を断っているケースもある。2009年の新型インフルエンザの教訓として、拡充が求められていた検査体制や事前調整の不備が影響している。

厚生労働省によると、検査は当初、国立感染症研究所と地方衛生研究所で1日1500件程度可能だったが「人員や試薬が不足し、フル稼働できなかった」という。このため民間の検査会社などに協力を求め1日約3800件まで拡充した。

ところがその後も「検査を依頼したのに断られた」という医師の指摘が相次いだ。加藤勝信厚生労働相は2月26日の衆院予算委員会で、検査は同月24日までの1週間で1日平均900件にとどまっていることを明らかにした。

現在は診察した医師が「検査が必要」と判断したら保健所に連絡。保健所から地方衛生研究所などに検査を依頼する。だが感染者が増えているある地域の保健所は「重症患者などの必要な検査を受けるため、政府の『目安』を満たしていない検査は受けないこともある」という。日本医師会は不適切な事例がないか全国調査する。

混乱の背景には政府の説明不足がある。

検査機器は1回で数十人分の検体を同時に調べる。「1日3800件」はすべての検査機器がフル稼働した場合の最大件数で、感染が広がっていなければ数件しか検査依頼がない地域もある。厚労省幹部は「全国でフル稼働した場合の理論値ということが伝わっていない」と理解を求める。

検査体制の不備もある。09年の新型インフルエンザの流行への対応を検証した厚労省の総括会議は報告書で「地方衛生研究所の検査体制などについて強化する」と提言した。その結果として検査機器は増えたものの、都道府県を越えた連携が不十分で機器を十分に活用できていない。

感染者が急増する韓国では2月24日までの1週間の検査件数が日本の最大件数に匹敵する1日平均約3400件。その後、車に乗ったまま検体を採取する「ドライブスルー方式」を導入するなど1日1万件を超える。

韓国では同月29日までに計約9万4千人を対象に検査を実施したが、日本は延べ約7千人。韓国では15年に中東呼吸器症候群(MERS)の感染が拡大、38人の死者を出した。感染症に詳しい専門家は「教訓を生かし、採取した検体を集めるなど効率よく検査機器を活用しているのではないか」とみている。

政府は受け入れに限りのある「行政検査」以外で検査しやすいように今月上旬にも検査を保険適用の対象とする方針だ。保険適用されれば、保健所を通じずに医療機関が民間の検査会社などに検査を直接依頼できるようになる。

厚労省は2月28日、保険適用となる検査を引き受ける方向の民間検査会社や大学病院などの担当者を集めて説明会を非公開で開催。だが参加者によると「検体を感染防止の基準を満たした3重の梱包で送ろうとしても、民間の宅配業者が引き受けてくれない」という訴えがあったという。

新型インフルエンザの教訓として求められていた、未知のウイルスに対する事前の調整不足が露呈する形になっている。

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