韓国の感染者3000人超す 検査徹底でジレンマ

2020/2/29 18:47
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25日、韓国・大邱で開かれた新型コロナウイルスの対策会議に出席する文在寅大統領(中央)=聯合・共同

25日、韓国・大邱で開かれた新型コロナウイルスの対策会議に出席する文在寅大統領(中央)=聯合・共同

【ソウル=鈴木壮太郎】韓国で新型コロナウイルスの感染者が29日、3000人を超え、文在寅(ムン・ジェイン)政権がジレンマに陥っている。防疫対策を徹底するほど感染者が増え、政権批判が強まっているのだ。4月には総選挙が控える。事態を早期に収拾できないと、政権基盤が揺らぎかねない。

韓国保健福祉省によると、29日に813人の感染が新たに確認され、累計3150人となった。死者は17人。感染者数が雪だるま式に膨らんでいるのは、検査数を大幅に増やしているからだ。

韓国は38人の死者を出した2015年の中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)流行を教訓に、手厚い検査体制を構築した。大邱市で18日、新興宗教団体「新天地イエス教会」の集団感染が確認されてからは検査のペースを加速。29日は1日で約1万2000件実施し累計9万件を超えた。

感染者は本人の同意なしに携帯電話による位置情報を収集され動線が公表される。新天地教会に31万人分の信徒名簿を提出させ全員を調査中だ。

だが、皮肉にも徹底検査で判明する感染者の急増が韓国社会の不安感を増幅させ、批判の矛先が文政権に向かっている。

「文大統領の弾劾を求める」――。韓国大統領府のホームページでは29日、この請願の賛同者が130万人を超えた。ひと月で20万人を超えると必ず回答するルールだ。大統領府関係者は27日「(立場を)整理して回答する」と語った。

世論調査会社の韓国ギャラップの28日の発表では、文政権の支持率は42%と、前週比で3ポイント低下。不支持は5ポイント増の51%と5割を超えた。

政府・与党の軽率な発言も火に油を注ぐ。

進歩系与党「共に民主党」の洪翼杓(ホン・イクピョ)首席報道官は25日、感染者の大半を占める大邱市と慶尚北道を対象に「最大限の封鎖措置を実施する」と発言した。中国政府が武漢市に取った措置をほうふつとさせると世論の反発を招いた。洪氏は翌日、謝罪に追い込まれ辞任した。

26日には朴凌厚(パク・ヌンフ)保健福祉相が国会で「(韓国感染の)最大の原因は中国から入ってきた韓国人だ」と発言し、これも世論が激しく反発した。

客船セウォル号沈没事故の対応の不手際で弾劾に追い込まれた朴槿恵(パク・クネ)政権の与党だった保守系野党、未来統合党は「敵失」で党勢拡大を狙う。同党が主張する「中国人の入国禁止」に賛同する国民請願は76万人を超えた。

韓国では4月15日の総選挙に向けた各政党による候補者の擁立作業が佳境を迎えている。任期5年の折り返しを過ぎた文政権の信任投票の性格を帯びる選挙の直前だけに、政府・与党は危機感を募らせる。

総選挙の延期論も浮上してきた。28日の文氏と各政党の党首の懇談会で、進歩系野党「民生党」の代表が文氏に提案した。同党によると文氏は即答を避けたというが、逆風にあえぐ政府・与党には助け舟になる。

ただ、未来統合党は千載一遇のチャンスを失いかねず、総選挙の延期には反対だ。文政権にとっても新型コロナを政治利用したとの批判を受けかねず、現時点では延期は難しそうだ。新型コロナを早期に終息させ、選挙への影響を食い止められるか。文政権は大きな試練を迎えた。

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