カモノハシ700系、東海道3月8日ラストラン 技術の礎に

2020/2/29 9:58
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車両先端部分のユニークな形状から「カモノハシ」の愛称で親しまれた新幹線「700系」が3月8日、東海道新幹線(東京―新大阪間)でラストランを迎える。21年前にデビュー。乗り心地を大きく向上させ、次世代車両「N700S」などに続く技術の土台を築いた。高速化が進んで引退を余儀なくされたが、利用者や運転士は別れを惜しんでいる。

「出張でよく利用した。座りやすく、指定席が取れないと悔しかった」。東京都内の60代の男性会社員は振り返る。1999年3月にデビューした700系。東海道区間の最高速度は先行の300系などと同じ時速270キロだが、乗り心地を格段に改善することで、それまでの新幹線のイメージを大きく変えた。

空気抵抗や気圧の変化を受けにくくするため、車両先端をカモノハシのくちばしのような長い形にし、車両間に振動を吸収する装置(ダンパー)を導入。トンネルに入る際にドーンと音が響く「トンネルドン」と呼ばれる騒音や振動を抑えることができ、消費エネルギーも低減した。座席のシートは体を包み込む、ゆったりとした形状を採用し、クッションを硬くしてフィット感を充実させた。

車両はJR東海と西日本が初めて共同で開発し、最速列車の「のぞみ」に投入された。技術的な基本コンセプトは現在の運行を支えるN700系やN700Aなどに引き継がれ、台湾では700系を基につくられた高速鉄道が走っている。「新幹線のお医者さん」として知られるドクターイエローも700系をベースに製造した。

デビューと同じ99年にJR東海に入社した新幹線運転士の関良平さん(39)は「初めて足を踏み入れたとき、『これまでの新幹線とは全く違う』と感じた。夏の大雨も冬の降雪も安定した実力で走ってくれた」と感慨深げに語る。

だが、高速化の波にはあらがえなかった。JR東海は輸送量向上のためリニア中央新幹線の27年開業を目指すとともに、東海道新幹線の高速化を進めている。3月14日のダイヤ改正で現在2編成ある700系は引退し、すべて最高時速285キロのN700系とN700Aになる。のぞみの運行本数を1時間最大10本から12本に増やすためだ。

7月には新型車両のN700Sが登場予定だ。全席で電源コンセントが使えるほか、デッキにスーツケースが置ける荷物コーナー(23年度運用開始)を設けるのも特徴だ。米国への輸出も視野に入れる。

700系は山陽新幹線(新大阪―博多間)で主に「こだま」「ひかり」として走る車両は残るが、多くは既に廃車となりリサイクルされている。JR東海は車体のアルミについて、再利用した記念メダルを発売したほか、20年夏に東京駅八重洲北口で開業する専門店街「東京ギフトパレット」でコンコースの柱や天井に用いられる予定だ。

ラストランとなる3月8日午前9時47分東京駅発の「のぞみ315号」の乗車券は、販売開始から34秒で売り切れた。「友との別れのような寂しさを感じる。未来につながる多くの功績を残した同期を誇りに思う」。運転士の関さんも最後の雄姿を記憶に刻みつけるつもりだ。

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