老朽マンション再生促す 適正管理の認定制度創設
築30年超などのマンションの老朽化対策が一歩進む。政府が28日に閣議決定したマンション管理適正化法などの改正案は、適切な管理をしている物件を認定する制度の創設や、敷地の売却をしやすくする。住民などの区分所有者で組織する管理組合に、修繕積立金の備えや円滑な建て替えを促す狙いがある。

国土交通省の推計ではマンションは2018年末時点で全国に約655万戸あり、国民の8人に1人にあたる約1500万人が住むとされる。そのうち築40年を超える物件は12%程度の約81万戸だが、20年後には約367万戸へと4.5倍に膨らむ。一方で滞納や空き部屋による修繕積立金の不足は深刻で、計画に比べて不足するマンションは35%に達する。
管理組合の機能不全も課題だ。501戸以上の大規模マンションでは総会の実際の出席割合が14%にとどまるほか、高齢化による役員の成り手不足も深刻だ。マンションを人生の終末期まで過ごす住まいと考える人は増えており、国交省は再生に向けた対策を拡充する。
柱の一つが「管理計画認定制度」の創設だ。適切な修繕計画の策定や積み立ての状況、管理組合の活動などを評価する。認定基準は国交省が作成し、認定は自治体が実施する。認定制度も含めて自治体はマンション管理への関与を強めることになる。必要に応じて管理組合に対して指導や助言を実施し、総会を開けていなかったり、積立金が著しく少なかったりする場合は改善を勧告する。
「資産価値や居住環境を維持していくうえで大きな一歩だ」。マンション管理業協会の岡本潮理事長(東急コミュニティー会長)は今回の改正法案を評価する。認定制度の創設と適正な管理の基準が示されることで、マンション管理の質の底上げにつながると期待をかける。ただ適正管理への社会の問題意識は依然として低いとして「今回の法改正は課題解決に向けた一歩でしかない」とも語る。

改正法案にはマンションの敷地売却をよりしやすくする規定も盛り込まれた。敷地売却制度は、敷地を不動産会社などに売却し、住民はその代金を元手に建て替えられたマンションに再入居したり、別の住居に引っ越したりする仕組みだ。
現在は耐震性不足が認定された場合のみ所有者の8割以上の賛成で売却可能だが、外壁などが劣化して周辺に危険を及ぼす可能性がある物件も対象に加える。今回の法改正について、東京カンテイの高橋雅之主任研究員は「前向きな動きだが、合意形成のハードルは依然として高い」と指摘する。住民間の収入格差や年齢といった属性の違いはマンション内の意思決定の壁として存在する。高橋氏は「管理組合などを通じた住民のコミュニケーションが大切になる」とする。
複数の棟で構成された団地型の分譲マンションの老朽化に対応するため、敷地を分割して売却しやすくする新制度もつくる。今は1棟だけを切り出して売る場合でも団地の所有者全員の同意が必要だが、この要件を5分の4に緩める。跡地に店舗や保育所を誘致して団地としての魅力を高めるなど、多様な再生手法を選択できるようにする。