仕事と子育ての両立 選択肢は多いほどいい
OECD東京センター所長 村上由美子

2020/3/1 2:00
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米国にはベビーナースという職業がある。出産で体力の低下した母親と新生児をケアするため、退院直後から自宅に住み込みでサポートしてくれる頼もしい存在だ。頼れる親族のいない米国で出産した私も大いにお世話になった。

3か月の産休・育休後にはフルタイムのシッターを雇い、職場復帰した。3人の子供を産んだ後も仕事を続けることができたのは、様々な育児サポートサービスを活用できたからだ。

一見、米国では仕事と子育ての両立はしやすいかのようだが、公的な育児支援は乏しく、実は相当な経済的負担が個人にのしかかる。日本に帰国した際、待機児童問題はあるにせよ、保育園の良心的な(安い!)料金設定には驚いた。

その日本では、育児の経済的な負担を軽減し出生率の向上につなげようと、幼児教育・保育の無償化が始まって半年になる。公的な育児支援の拡大は歓迎すべきだが、それだけでは財源的にも限界があるだろう。現実的には、育児や保育サービス分野の自由化を進め、国民の選択肢を増やすことが重要ではないか。

米国では公的な産休・育休の制度が日本や欧州に比べて少ないことが経済格差拡大の一因になっていると指摘されている。日本の経済格差の特徴は、男女の賃金格差が大きいことと、子供の貧困率が高いことだ。シングルマザーに育てられる子供が貧困に直面するケースも多い。貧困の連鎖を断ち切るためにも、低所得層に対する幼児教育・保育の無償提供は有効であろう。

さらに踏み込んで、結婚や育児・出産そのものについても様々な選択肢を提示してはどうか。例えば、夫婦別姓というフレキシブルな結婚の形を望む声は多い。卵子凍結により出産のタイミングを柔軟に選びたい人もいるし、ベビーシッターなどの育児サポートや家事代行サービスを活用して子育ての一部をアウトソースしたい人もいる。同性カップルで子供を養子に迎えて共に育てたいという人もいるだろう。

こうした選択肢を認めることは、異なる価値観を持つ人への攻撃ではない。自らの責任で納得できる結婚・出産・育児スタイルを選びたいというのは、誰しもが当然望む権利だ。結婚や育児に関する選択肢が増え、各人が希望する形で子供を産み育てることができれば、少子化問題も解決に向かうのではないか。

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