洋上風力銀座へ、北海道で相次ぐ大規模構想

2020/2/28 12:15
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洋上風力発電の構想が北海道で相次いで浮上している。Jパワーやコスモエコパワー(東京・品川)による大規模な発電構想が明らかになり、室蘭市では電材ホールディングス(北海道室蘭市)などが浮体式設備の稼働を目指す。送電網の容量不足など不確定要素もあるが、北海道が全国屈指の「洋上風力銀座」へ動き始める。

「陸上の実績に加えて海外の知見もある。うち以外にやれる企業はいない」。Jパワー再生可能エネルギー本部の戸田勝也室長は洋上風力に自信をのぞかせる。19年8月、30年ごろに檜山沖で最大出力72万キロワット、約70基強の風車を稼働させる計画を公表した。総工費は数千億円にのぼるという。

Jパワーにとっても過去最大の再エネ計画だ。20年度から実施するボーリング調査などを経て詰める。道南のせたな町や上ノ国町で手掛ける陸上風力や、英国で出力86万キロワットの洋上風力プロジェクトに出資して得た地域とのパイプやノウハウを生かす考えだ。

コスモエネルギーホールディングスの風力発電子会社、コスモエコパワーは石狩湾沖と檜山沖の2カ所でそれぞれ出力100万キロワットの設備を検討する。稼働は東北での計画が一段落する25年以降になる見込みだ。

Jパワーはせたな町や上ノ国町で風力発電をおこなっている(せたな町)

Jパワーはせたな町や上ノ国町で風力発電をおこなっている(せたな町)

コスモHDは19年度から首都圏などで家庭向けの電力販売に参入。さらに19年12月からは実質二酸化炭素排出量ゼロの電力を販売するサービスも始めた。風力電源を増やすことで「電源から発電までの一貫した体制を自前で整える」(コーポレートコミュニケーション部)狙いがある。

政府が19年4月に洋上風力発電を促進する新法を施行し、洋上風力には追い風が吹く。「促進区域」に指定されれば洋上風力を優先的に整備できる。既に長崎県五島市沖が選ばれ、次点で秋田や千葉の3海域も有望区域とされている。

「新法の施行でメガバンクも計画への融資に前向きになった」(再エネ事業者)。北海道はまだ促進区域の候補になっていないが、潜在的な風力エネルギーは全国トップクラスとされる。将来の指定を見越し、企業が有望な地域を押さえようと活発に動く。

道内企業でも電材HDや日本製鋼所室蘭製作所(室蘭市)、栗林商会(同市)などが1月、洋上風力の拠点化を目指す協議会を室蘭市に立ち上げた。メンバーには近く室蘭工業大学や室蘭信用金庫も加わる。

室蘭は天然の良港を持ち、鉄の街として大きな設備投資をしなくても洋上風力に対応できる産業が集積している。協議会はまず青森県沖の洋上風力向けに部材を造ったり組み立てたりする拠点港を目指す。その後は発電事業者を呼び込み、28年に室蘭から苫小牧にかけての沖合で洋上風力を着工、30年をめどに稼働させる息の長い計画だ。

北海道電力の藤井裕社長も洋上風力など再エネの普及に意欲をみせる(1月、札幌市)

北海道電力の藤井裕社長も洋上風力など再エネの普及に意欲をみせる(1月、札幌市)

室蘭沖は水深があり、ロープなどで風車をつなぐ浮体式が適しているとされる。既に複数の発電事業者から問い合わせがあるといい、協議会では洋上風力の電気で水素を製造し、エネルギーとして地元での消費や市外に売る方式も想定。電材HDの上村浩貴取締役は「道外ではなく地元にお金が落ちる仕組みを作っていきたい」と意気込む。

北海道では11年の東日本大震災後の固定価格買い取り制度(FIT)の開始後、再エネ電源の接続申し込みが相次いだ。送電線は容量が上限に達した地域もあり、すぐに新たな電源を接続できない状況だ。送電線を増強すれば、コストの一部の電気料金への転嫁は避けられない。

石炭火力への逆風から再エネへの期待度は高いが、天候次第で変動する出力を安定させるには蓄電池など大規模な投資も必要になる。欧州で急速に普及する洋上風車が日本でも見られるようになるまでにはハードルもある。国内の主導権争いも始まったばかりだ。

(向野崚)

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