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市場動揺、現実味増す新型コロナの「ブラックスワン」

編集委員 藤田和明

世界的な株式市場の動揺が止まらない。27日の米国市場ではダウ工業株30種平均が1190ドル安と過去最大の下げ幅となり、28日午前の日経平均株価も一時700円を超える下げとなっている。新型コロナウイルスの感染拡大が、アジアだけでなく、欧州や米国など世界的に広がり、なお歯止めがかからないからだ。「局所的・早期解決」への期待が次第に消え、「広範囲・長期化」の重い問題となり、世界経済の体力を奪いかねないという懸念に市場の視線が変わってきた。

世界的な疫病の流行を示す「パンデミック」。このことばが日増しに市場で使われるようになった。米ムーディーズ・アナリティクスのチーフ・エコノミスト、マーク・ザンディ氏は「パンデミックになる可能性は40%に高まった」とする。それまでは25%とみていたが、封じ込められなくなる恐れがある。

もしそうなると、世界および米国経済が今年上半期に景気後退に陥るとみる。「我々はみな、このブラックスワンが飛ぶことを望んではいない。しかし、それがあり得ることに備えておくのが賢明だ」

ブラックスワンとは「黒い白鳥」。かつてオーストラリアで黒い白鳥が発見され、白鳥は白いという常識が覆されたことにたとえた表現だ。予測不能の事態が起き、それが衝撃となって大きな影響を人々に与えることをいう。新型コロナの感染拡大が、金融市場にとってブラックスワンになってしまう現実味が増しつつある。

今週に入ってダウ平均の下落率は10%を超え、米国株の調整局面入りが警戒される水準になった。それ以上に、市場の動揺ぶりを示すのがVIX指数だ。「恐怖指数」とも呼ばれ、金融派生商品であるオプション取引の動きをもとに、市場参加者が将来起きうる価格変動にどれだけ備えようとしているかを読み取る指数だ。このVIXが27日は39.16と一気に前日比42%上がった。

新型コロナの影響を伝える情報の中心が米国企業に移ってきたことが、今週の明らかな変化だ。米ゴールドマン・サックスは米国の主要企業の今年の1株当たりの増益率はゼロになるとの見通しを出した。増益基調を前提にしてきた楽観論は後退を迫られている。米マイクロソフトは、パソコン関連部門の1~3月期の売上高が事前予想に届かない見込みだと公表した。カード会社も決済サービスへのマイナスの影響を表明した。

気になるのは在中国の米国商工会議所の調査結果だろう。中国に拠点を置く米企業に新型コロナの拡大が8月末まで収束しなかった場合には「中国での20年の売上高が半減する」との回答が全体の2割に上った。同時に現地のコスト高にも直面している。

振り返れば、1997~98年のアジア通貨危機・LTCM破綻、2000年のIT(情報技術)バブル崩壊、08~09年の米金融危機など、多くのひとが想定していなかったブラックスワンがあらわれるたびに、市場は大きく調整を迫られた。

米金融危機の場合、米リーマン・ブラザーズが破綻して市場の信用機能が損なわれ、取引相手であるカウンターパーティーリスクへの警戒感が強まったことが危機を増幅した。今回の新型コロナの影響はむしろ、実体面から人やモノの行き来が止まり、企業の目の前から売り上げが消えてしまう。財務の弱い企業や中堅・中小企業ほど体力が奪われてしまうリスクがある。

それはいまの各国の緊急施策にあらわれている。中国では、中小企業の資金繰りのために、新たに5千億元(約8兆円)の金融支援枠を用意した。ドイツのアルトマイヤー経済相も短期の流動性供給を表明した。今後さらに金融市場の動揺が止まらなければ、各国の追加の金融緩和や財政出動に対する市場の期待も高まってくるだろう。

ここまでのところ、クレジット市場に著しい動揺はみえていない。ただ今週に入って海外有力ヘッジファンドの訪問を受けた企業の幹部は、相手から「保守的すぎるほど現金を抱え込んでいる企業の方が、結果的に強くみえる局面だ」とする議論を聞いたという。

もちろん動揺している人ばかりではないはずだ。今週の米国株の急落にあたり、米著名投資家のウォーレン・バフェット氏は米メディアに対し、「米国のビジネスの10年、20年の見通しが変わるわけでない」という趣旨の発言をしたことが伝わった。

どこかで新型コロナの感染拡大が収束してくれば、経済活動も正常化に向かう。それまで抑え込まれていた分の需要も合わせて戻ることを考えれば、回復力も強さを伴うだろう。ただ、封じ込めに手間取れば手間取るほど、景況感悪化の足音が後ろから高まってくる、そんな局面に入っている。

新型肺炎

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