米で植物肉普及、ビヨンド社の売上高3.4倍

2020/2/28 11:40
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ビヨンド・ミートは2019年の売り上げ規模が前年の3.4倍になった(米カリフォルニア州のスーパー)

ビヨンド・ミートは2019年の売り上げ規模が前年の3.4倍になった(米カリフォルニア州のスーパー)

【シリコンバレー=佐藤浩実】エンドウ豆や大豆など植物由来のタンパク質で作る「植物肉」の需要拡大が続いている。新興の米ビヨンド・ミートが27日に発表した2019年の売上高は18年比3.4倍となった。環境対応の取り組みなどで企業を選別する「ESG投資」が広がり、気候変動に向き合う姿勢を示したい企業が需要のけん引役になりつつある。

ビヨンドは19年5月に植物肉の専業として初めて米ナスダック市場に上場し、27日に19年1~12月期の通期業績を開示した。売上高は前年比3.4倍の2億9789万ドル(約330億円)。19年10~12月期だけで18年1~12月期の売上高(8793万ドル)を上回った。19年の最終損益は1244万ドルの赤字だが、販売量の拡大に伴い収益性は改善しつつある。

ビヨンドのイーサン・ブラウン最高経営責任者(CEO)は会見で「(味や価格など)動物性タンパク質とのギャップを埋めるための投資を続けていく」と語った。他社製品も含めて米国の植物肉市場は約8億ドルとされる。食肉需要が世界で1兆4千億ドル、米国だけで2700億ドルあるのと比べれば微々たるものだ。通常の肉と比べて塩分濃度が高いといった課題もある。

ただ欧米を中心に、牛の飼育や畜産が気候変動の一因となっているという認識が急速に広がりつつある。環境・社会・企業統治を重視するESG投資が広がるなかで「肉離れ」を掲げる企業も現れており、植物肉のような新しい製品の需要拡大を後押ししている。

イベントで牛肉を撤去

米セールスフォース・ドット・コムは19年秋にサンフランシスコで開いた17万人規模のイベントで、来場者に提供する食事メニューで牛肉を使用しなかった。計算上、約3400万リットルの水を節約できたとみる。「食べ物と環境の関係を、顧客や協業先に理解してもらうべきだと考えた」と同社の持続可能性担当、スンヤ・ノーマン氏は話す。

米スターバックスのケビン・ジョンソンCEOは1月下旬に公表した持続可能性に対するコミットメントで「植物由来製品の選択肢の拡大」を挙げた。3月からカナダにある約1500店舗で、ビヨンドのパティを挟んだサンドイッチの販売を始める。ビヨンドによれば、同社の製品を扱う飲食店やスーパーの数は7万7千店に達し、新規株式公開(IPO)時点の2.6倍に増えた。

ビヨンドの成長が明らかになってきたことで、世界の食品業界では植物肉に触手を伸ばす大企業が相次いでいる。スイスのネスレや米ケロッグのほか、2月24日には米食糧大手のカーギルが新たに参入を表明。日本でも日本ハムや伊藤ハムなどが製品開発に乗り出した。ブラウンCEOは競争について「数多くの新規参入者がいる」としつつ、20年の売上高見通しを5億ドル前後と予想。気候変動に対する意識の高まりから、19年比で6~7割の拡大が可能とみる。

一方で、セールスフォースのノーマン氏は「持続可能性の議論は複雑だ」と述べる。「食品輸送に伴う環境負荷なども含めて、もっとも効果的な施策を深く分析する必要がある」。日本でも広がり始めた植物肉はブームか新たな潮流か。見極めは続く。

日本ハムなど参入続々

北米で先行する植物肉は、日本のメーカーや飲食店でも広がりつつある。日本ハム、伊藤ハムなどの食肉大手は植物肉を相次ぎ開発しており、3月から家庭向け商品を販売する。日本ハムはハムやソーセージなど5商品、伊藤ハムはソーセージなど8商品を扱う。食品素材メーカーの不二製油グループ本社は大阪府泉佐野市の工場で植物肉を生産しているが、千葉県に新工場を建設中だ。

「モスバーガー」を展開するモスフードサービスはパティだけでなく、パンやソースにも動物性の材料を使わないハンバーガーを今夏にも全国販売する。大豆を使ったパティやほうれん草を練り込んだパンなどを開発。価格は主力商品より4割程度高い500円台となる見通しだ。

日本の消費者は価格に敏感で、味などへの要求水準も高い。外食チェーンではこれまでも大豆を使ったハンバーガーなどの商品はあったものの、大ヒットにはつながってこなかった。

ただ、健康志向は年々高まっており、海外のようにエシカル(倫理的な)消費もじわじわと広がっている。食肉に劣らない風味や食感、競争力のある価格を提示できるのかがカギとなりそうだ。(江口良輔、川原聡史)

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