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「恐怖指数」危機水準に、AIは新型コロナ感染せず

27日のニューヨーク株式市場は、ダウ工業株30種平均の下げ幅が1190ドルとなったこともさること、日中のボラティリティー(価格変動)がまれに見る激動であった。まずいきなり下げ幅が400ドル強で寄り付いて900ドル安まで売り込まれ、その後一転して約200ドル安まで買い戻された。だが引けにかけて1000ドル近い暴落を演じた。米VIX指数も28弱から39台へと、「危機水準」に急騰した。人工知能(AI)がアルゴリズム取引で売買注文を乱発したことで、人間はあっけにとられ見守るだけのごとき状況となった。

注目は金融政策の対応だ。市場では「年3回利下げ説」が主流になりつつある。米連邦準備理事会(FRB)は、米国内の感染者数などを確認したうえで利下げに踏み切るであろう。もし2019年の「保険的利下げ」が無ければ、さらなる急激な利下げを強いられたかもしれない。結果的には「予防的利下げ」は正解であった。

ただし新型コロナウイルスに揺れる市場で、金利政策の効果には限界がある。利下げよりワクチンだ。ウイルスに揺れる市場で金利政策の効果には限界がある。経済への支援策としては、むしろ財政政策への依存度が高まろう。

注目される米国内の感染者をめぐっては、初の市中感染が確認されたカリフォルニア州では、33人に陽性反応が出ている。検査キットが200だけなので、いまだ全貌を把握するまで時間を要する。アジアからの空路入国者、約8400人を対象に「経過観察中」だ。特に中国人、韓国人、イラン人のコミュニティーでの集団感染が危惧されている。

27日の株価暴落は、感染者がこれから急増するのを先取りした動きとも読める。一歩引いてみると、2週間ほど前には米国株式市場は過去最高値を達成していた。その後、短期間で10%を超える急落となった。「相場は絶望で芽生え、悲観で育ち、楽観で成熟して歓喜で終わる」という相場格言がある。まさに今の市場は、歓喜から絶望へ移行の段階だ。次の「芽生え」はいつになるか。感染拡大のピーク次第となりそうだ。

では、これまで株高を「トランプ政権の経済政策に対する評価」と自賛してきた大統領は、どのように反応するだろうか。27日の記者会見では、株安について聞かれ「民主党候補とFRBが悪い」と無理筋の責任転嫁をしていた。米大統領選挙でもコロナウイルスへの対応が重要な論点となりつつある。

債券市場の異音もノイズレベルが上がってきた。米10年債利回りは1.26%と、連日で過去最低を更新中だ。安全資産の分野では、マネーの流入先は米国債への一極集中の様相だ。金は株損失の穴埋めとして益出しの売りが顕著で、相場の頭が重くなっている。安全通貨としての円も色あせた。これだけの株暴落であれば、従来なら105円台になっても不思議はないところだ。それが109円台にとどまっている。それも、利下げ予測の思惑から金利差が意識され、ドルが売られて結果的に円高となっている。欧米市場で円の安全通貨神話は崩れつつある。

マクロ経済への見方としては、20年1~3月期の米国経済成長率について1%程度との予測が出始めた。直近ではイエレン前FRB議長が「米国経済にはコロナウイルスによって景気後退のリスクがある」と発言して注目された。

米中経済が共倒れするリスクも絵空事とはいえない。そのなかで、欧米市場も驚く、突然の全国への休校要請に踏み切った日本の経済も、正念場を迎える。

豊島逸夫(としま・いつお)
 豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com

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