就活の新潮流「自己PR動画」 文章自信なくてもチャンス
就活探偵団

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2020/2/28 2:00
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

政府の就活ルールが定めた企業の説明会の解禁が3月1日に迫った。今年の就活の新潮流の一つが「自己PR動画」だろう。面接で就活生に会う前に人材を見極められ、事前に提出させる企業が増えている。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で説明会などの中止や延期も相次ぐ。通年採用の拡大などもあり人事担当者の負荷が高まる中、効率的に選考できる手段として注目を集めている。学生も適切な撮り方に注意が必要だ。

■印象の良い自己PR動画って?

「動画は学歴やエントリーシートの文章に自信がなくても逆転できるチャンスがあります」

就活が本格化する目前の1月。跡見学園女子大(東京・文京)の一室に就活生が詰めかけた。お目当ては自己PR動画対策講座。講師は神戸市で写真館「Settsu Studio(セッツスタジオ)」を経営するカメラマンの赤松隆氏だ。

赤松氏は毎年2500人の就活生の証明写真を撮影する人気カメラマン。中には東京在住の学生がわざわざ新幹線に乗って訪れるほどだ。

自己PR動画はあらかじめ会社から指定されたスマホアプリを使い、30秒や1分など短時間で自己PRや志望動機などを話してもらうというもの。企業の人事担当者はこれを見て実際に1次面接に呼ぶべき人材かどうか判断の材料にする。多くの場合はエントリーシートと同時に提出する。

2020年卒の就活では、赤松氏が学生から自己PR動画の提出を求められたと相談があった企業は全日本空輸や資生堂など大手企業を中心に14社。21年卒の選考でも動画の提出を求める可能性が高いという。

■企業が選考効率化

自己PR動画が増えたのは選考をより効率化させようと考える企業側の事情が大きい。従来の企業の人事担当者は一定期間採用活動に費やしていればよかった。しかし、インターンシップの開催や通年採用などの導入で、年中採用活動に携わらなくてはならなくなった。人材コンサルティングのヒューマネージ(東京・千代田)の調査によると通年採用の拡大で「業務負荷が増える」と懸念を感じる人事担当者は75%に達する。

売り手市場とはいえ、人気企業の場合はエントリー数が数千にも達する。すべての人を面接するのは不可能だ。そこで効率的な予備選抜の方法として登場したのが動画選考というわけだ。

これまでは「学歴やエントリーシートの内容などで判断してフィルターをかけていた」(赤松氏)が、実際に面接に呼んでも、実物とかけ離れているケースがよくある。動画エントリーならそうした就活生を未然にはじくことができる。

オリエンタルランドの子会社でホテル運営を手掛けるミリアルリゾートホテルズ(千葉県浦安市)は18年卒の総合職の採用から動画選考を導入した。20年卒では「志望動機」「学生時代に頑張ったこと」など複数のお題の中から選ばせ、30秒で話してもらった。

動画を提出させることでエントリーのハードルが上がり志願者が減る懸念があったが、「志望度が高い人が受けてくれるようになったため、選考過程での辞退者が格段に減った」(人事部の飯高雅人シニアマネージャー)と効果を実感する。

■全日空も導入

全日本空輸でも総合職で動画選考を昨年初めて導入した。「動画選考を導入してから1人の採用者にかける時間は増えた」(人財戦略室の橋本昌樹マネージャー)。動画選考という新しい評価項目が増えることによって、就活生も様々な角度から見てもらうことができる。「表現をする場が1つ増えたと思ってもらえば」(橋本氏)

新型コロナウイルスの感染拡大の影響から企業の採用活動でも大人数が集まる説明会などの中止や延期が相次いでいる。動画エントリーは就活生と直接会わなくても選考ができる手段であるため、ウェブ面接やウェブ説明会と同じように導入する企業が増えそうだ。

■撮影のコツ聞いてみた
 就活生にとってエントリーシート(ES)や面接対策は就活スキルとして定着しているが動画は未知なる領域。「どこを評価されるのかわからない」「撮影するのが面倒」などと不安の声も聞かれる。赤松氏の講座から動画撮影のコツを探った。


 まずは話す原稿を作ろう。30秒なら175文字を目安にするとよい。志望理由を問われたなら、受ける会社の魅力などを、企業のウェブサイトにある企業理念やブランドビジョンから、自分の言葉に置き換えて盛り込むといい。
 原稿ができたら早速撮影だ。背景はできれば白い壁のほうが被写体が引き立つのでいい。カメラのレンズの位置は目線の高さにする。肩より下になると下からなめるようになってしまい、威圧感が出てしまう。
 ■原稿は暗記しよう
 原稿は暗記してしまおう。原稿を読もうとすると下を向いてしまい印象が悪くなってしまうからだ。はっきり聞き取りやすく話すのが大前提だが、心なしか早めに話すと自然と声のトーンが上がり、明るさや元気をアピールすることができるという。
 強調したいことは手持ちのフリップに書き込むことも有効だ。例えばA4の紙を3面になるように折り、話しに合わせてくるくると回せば、効率よく伝えることができる。
 カメラ機能の設定にも注意。スマホに画面の明るさ調節機能があれば表情がしっかり見えるよう撮影前に調整しよう。数回の撮影だけではうまく撮影できない人が大半で「1分の動画を作るのに4時間程度かかる人もいる」(赤松氏)というからある程度の覚悟が必要だ。
 赤松氏の講座を受講した跡見学園女子大3年の女子学生は昨年、放送局のインターンシップの動画選考で落ちてしまった。「ネットで探しても動画選考のやり方が見つからなくて困っていた。コツがわかったので、今後接客業の選考を受ける時に生かしたい」と話す。
 ■屋外での撮影NG
 動画選考を導入する企業を取材していくと、残念な動画に出合ったという話もいくつか聞いた。ある企業の人事担当者は、屋外で撮影した動画を挙げる。周囲の音を拾ってしまい、何を言っているのかわからないそうだ。また選考を受ける人だけでなく、複数の人が登場する動画も印象があまりよくないようだ。
 手間や時間がかかる動画選考だが、あらかじめ準備ができるので、緊張していない状態で自分の素の部分を伝えることができる。十分な対策ができていない就活生が多い中、差をつけられる可能性が高い分野だと言える。

(企業報道部 鈴木洋介、久貝翔子)

「日経産業新聞 2020年2月28日付を再構成」

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