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大津いじめ訴訟、二審は400万円に賠償減額 大阪高裁

(更新)

大津市で2011年、市立中2年の男子生徒(当時13)が自殺したのはいじめが原因だとして、遺族が加害者側とされた元同級生らに損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が27日、大阪高裁であった。佐村浩之裁判長はいじめと自殺の因果関係を認める一方で「両親にも生徒を精神的に支えられなかった過失があった」と判断。約3750万円の支払いを命じた一審判決を変更し、賠償額を約400万円に減額した。

判決によると、生徒は11年10月に自宅マンションから飛び降りて死亡し、遺族は12年に元同級生側と市に約7700万円の賠償を求めて提訴した。19年2月の一審・大津地裁判決は「いじめが自殺の原因になった」と認定。自殺も予見できたとし、元同級生3人のうち2人に請求のほぼ全額の賠償を命じた。

判決理由で佐村裁判長は、一審同様にいじめ行為の存在を認め「首を絞めたり顔面を殴打したりするなど、いたずらの域を逸脱する陰湿で悪質なものだった」と指摘。いじめによって無力感や閉塞感を抱いた被害者が自殺する可能性は、学術的にも一般的な知見として確立しており「いじめと自殺の間には相当な因果関係がある」と述べた。

その上で、佐村裁判長は生徒の自殺に関し、遺族側に落ち度がなかったかどうかも検討。生徒が自ら自殺を選択していることなどから「両親側も家庭環境を適切に整え、精神的に支えられなかった」などとして過失を相殺し、約400万円の賠償額が妥当とした。

この問題を巡り、市の第三者委員会は13年、「いじめが自殺の直接的要因」などとする報告書を公表。これを受け、市は15年、自殺を防げなかった過失責任などを認め、和解金1300万円を支払うなどの内容で両親と和解した。

一方、滋賀県警は元同級生3人を暴行容疑で書類送検するなどし、大津家裁は14年、2人を保護観察処分、1人を不処分とした。大津のいじめ問題を契機に、特に重大なケースでは各学校に調査組織の設置や自治体などへの報告を義務付けた「いじめ防止対策推進法」が13年に施行された。

いじめ対策法整備の契機に 専門家「加害児童指導にも目を」

大津市の中2男子自殺はいじめ対策が強化されるきっかけとなった。

国は2013年、いじめ防止対策推進法を制定した。各学校に教職員や心理、福祉の専門家らでつくる対応組織の設置を義務付けた。命の危険や不登校につながった疑いのある「重大事態」が起きた場合、事実関係の調査や国や自治体への報告も義務化した。

大津市での自殺発覚後、いじめの認知件数は増加傾向にある。文部科学省の調査によると、全国の小中高校などで18年度に認知されたいじめは54万3933件で過去最多。重大事態も最多の602件だった。

自治体はいじめの早期把握に神経をとがらせている。

大津市は13年度から、市立小中学校にいじめ対策を専門に担当する教員を配置。いじめ自殺が起きた11年度に151件だったいじめが疑われる事案の報告件数は、18年度に3893件と20倍以上になった。市教育委員会の担当者は「教員一人ひとりのいじめに対する認識が深まり、小さな事案でも幅広く拾い上げて対処するようになった」と話す。

大阪市は18年12月以降、対話アプリ「LINE」のアカウントで週に一度、学校生活の悩み相談を受け付けている。夏休みなど長期休暇明け前後は受付頻度を増やし、19年4~12月はいじめや人間関係などの相談が延べ約950件寄せられた。

認知件数の増加は早期対処に向けて一歩前進と言えるが、教職員にとっては報告書作成や保護者への対応などの業務負担増になりかねない。

大阪市は19年度、弁護士や臨床心理士などの専門家を学校に派遣して問題解決を支援する仕組みを整備。大津市も20年度には過去の事例を基にAI(人工知能)でいじめの深刻化の可能性を分析するシステムを導入する方針で、「事案の認知と適切な対処を両立したい」(同市教委の担当者)と力を込める。

いじめを理由に命を絶つ子供は後を絶たない。文科省によると、全国の国公私立の小中高校在学中に自殺した児童・生徒は11~18年度に計62人に上った。年度別では11年度の中学生4人に対し、18年度は中高生9人で歯止めが掛かっているとは言えない。

関西外国語大の新井肇教授(生徒指導論)は「学校が定めるいじめ防止の基本方針について、児童や保護者は必ずしも十分に浸透していない。児童らから意見を聞く場を設けて理解を促すなど、いじめをしない子供を育てる環境を築くべきだ」と強調。「被害者だけでなく、加害者の成長支援を含めた教育的指導を充実させることも重要だ」と話す。

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