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地方景気悪化の恐れ 新型コロナで損失深刻

新型コロナウイルスの感染拡大が、地方景気を悪化させる恐れが強まってきた。中国からの航空便欠航やイベント中止による観光客急減に続き、部品の供給が滞っている製造業にも影響が及びつつある。地域によっては経済損失額が数カ月で1千億円に達するとの試算もあり、政府や日銀による各地の景気指標には先行き不安が目立つ。

さっぽろ雪まつりは新型コロナウイルスの影響で来場者が振るわなかった(2月、札幌市)

「部品が入ってこないのでは仕方がない。(生産調整が)長期化するのではないかと不安になる」。中国製部品の調達が困難になり、2月に完成車の生産ラインを一時停止した日産自動車九州(福岡県苅田町)の男性従業員はこう話した。金沢市に本社があるパソコン周辺機器メーカーのアイ・オー・データ機器は、中国の企業と新商品の電子黒板を開発しているが、中国に社員を送り込めず、現地での開発に支障が出ている。

地方空港と中国を結ぶ航空便は運行停止が相次ぎ、中国人観光客は急減している。新潟空港では中国東方航空の上海路線と中国南方航空のハルビン路線が4月末まで欠航となった。佐賀空港では格安航空会社(LCC)の春秋航空が上海路線の運航を段階的に停止した。

地方企業の中には業績見通しを下方修正する動きが出ている。ロイヤルホテルは2020年3月期の営業利益を従来予想より14億円下方修正。新型コロナの拡大に伴う中国からの団体客の減少が影響するという。西日本鉄道も新型コロナの感染拡大で国際物流部門などに影響が出るとみて、20年3月期の連結純利益の予想を引き下げた。

自治体やシンクタンクは新型コロナによる地域経済への影響額を試算。北海道は「中国人観光客の減少が3月まで続くと観光消費が少なくとも200億円以上減る」との予測を公表した。中国政府による海外への団体旅行禁止が3月末まで続いた場合、北海道を訪れる中国人観光客は約9万人減少するという。

静岡経済研究所(静岡市)は新型コロナによる宿泊客の減少が6月まで続いた場合、静岡県内で累計1071億円の経済的損失が生じると試算した。県内の宿泊関連事業者への聞き取りなどを基に、2~6月の宿泊や飲食などの損失額を推計した。前年同期の3分の1が失われる計算だ。

地域の景気見通しにも悪化の動きが出ている。内閣府がまとめた景気ウオッチャー調査(街角景気、1月下旬実施)では、全国11地域のうち10地域で19年12月より先行き判断指数(DI)が低下した。愛知、岐阜、三重、静岡の東海4県では「新型コロナの影響で訪日客のキャンセルが相次いでいる」(ホテル)、「中国に工場を持つので、操業の停止期間や部品供給の動向によっては業績に大きな影響が出る」(電気機械器具製造業)などの声があがった。

日銀大阪支店は2月の関西金融経済動向で、景気判断を「基調としては緩やかな拡大を続けているものの、足元では新型コロナウイルス感染症の影響がみられている」と従来より引き下げた。引き下げは4年3カ月ぶりだ。山田泰弘支店長は「中国との強い結びつきを踏まえると、関西での影響は大きい」と語った。

地域金融機関は相談窓口の開設や、緊急融資を開始している。岩手銀行は訪日客が減って高級肉の需要が落ちた畜産業者に運転資金を融資。中国からの輸入が止まった製造業者や、輸出入貨物の減少に悩む運送業者などからも相談が寄せられている。

自治体も制度融資などで企業を支えている。静岡県は中小企業向けの制度融資に専用枠を設けた。直近1カ月間の売上高が前年同月比で1割以上減り、今後2カ月間を含む3カ月間の売上高が前年より1割以上減少することが見込まれる中小企業に最大5000万円を融資する。専用枠を設けるのは東日本大震災以来9年ぶりだ。

自治体予算に新型コロナ対策費を計上する動きも目立つ。富山県は19年度当初予算の予備費から2230万円を計上し、検査設備を1台増やすほか、防護服700セットなどを購入する。京都府は2月補正予算案に新型コロナ対策費として約20億円を計上。感染拡大の影響で売上高が減少した中小企業への緊急融資などに充てる。新型コロナの影響を迅速かつ徹底的に押さえ込めるかが、今後の地域経済の行方を左右しそうだ。

各地「中韓の穴埋め」腐心

日韓関係の悪化や新型コロナウイルスの影響で訪日客が減少する中、韓国や中国の観光客減少を補おうと、観光地は知恵を絞っている。

漫画「名探偵コナン」の原作者の出身地・鳥取県北栄町にある「青山剛昌ふるさと館」は昨年、韓国人客の減少を受けてタイや中国からの誘客を強化。今年1月に中国人の客数が前年の3倍超に膨らんだが、その後は新型コロナの拡大でキャンセルが続出した。石田敏光館長は「様々な国際的な課題が少しでも改善してほしい」と期待する。

外国人観光客の5割を韓国人が占めていた福岡県柳川市も、タイからの集客を強化している。昨年12月に市の観光パンフレット「柳川旅物語」のタイ語版を作成。観光案内所などで配布しているほか、タイでの観光プロモーションに活用する。

沖縄県はほぼ未開拓だったロシアからの集客に注目している。19年には知事や副知事が訪ロし、温暖なリゾートをPRした。ロシアでは冬のタイ観光の人気が高く、県内の観光関係者は「冬に来てもらえれば客数の減少を穴埋めできる可能性がある」と期待する。

日本政府観光局によると、訪日外国人のうち中国と韓国で約半分を占める。観光政策に詳しい東京女子大学の矢ケ崎紀子教授は「近隣国との関係悪化は将来生じる可能性もあるため、一国からの誘客に頼らずリスクを分散する必要がある。地域の観光資源に合う国を見付け開拓すべきだ」と話している。

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