子どもの虐待・事故死防げ、死因や背景を多角的究明

風紋
コラム(社会・くらし)
2020/3/8 2:00
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事故や病気、虐待などで子どもが死亡した事例を検証して「防ぎうる死」を減らす「CDR(チャイルド・デス・レビュー)」と呼ばれる制度を導入する機運が高まってきた。医療機関や警察・消防、児童相談所など多機関の専門家が連携し、子どもの死因や背景を多角的に究明して登録・検証することで、個人、家庭、社会での再発予防につなげる仕組みだ。

愛知県医師会で試行的に行われたCDR会議(2019年11月)

CDRは1970年代後半に米ロサンゼルスで虐待死を見逃さないために始まったとされる。法制化された米英では、親が添い寝した乳幼児の窒息死などが続発していることを明らかにして添い寝の危険性やベビーベッドの使用について啓発キャンペーンを行ったり、交通事故が多発する交差点に信号機を設置したりしているという。

CDRを導入する背景には、我が国で虐待死やプール、風呂での溺死、高所からの転落死など同様の事件・事故が続いていることがある。

日本小児科学会子どもの死亡登録・検証委員会委員長で名古屋大学病院講師の沼口敦医師は「その都度、保護者や管理者の責任が追及されるが、それによって報道や事故の対応が収束してしまい、次の悲劇を防ぐことにつながらなかった。CDRの本質は責任の追及ではなく、再発の予防にある」と指摘する。

同医師らのチームが全国155医療機関を対象に、2014~16年の18歳未満の死亡事例約2千件を分析したところ、対策を講じていれば防げた可能性がある事例が4分の1に上ることが明らかになった。

国も20年度から制度を模索するモデル事業を実施する方針を決めた。19年12月に施行された「成育基本法」は子どもの死因に関する情報の収集や活用などの体制とデータベースの整備を求め、20年4月施行の死因究明等推進基本法にも盛り込まれている。

モデル事業は、多機関で検証する組織を都道府県単位で設け、個別事案を検証し再発防止策を提言するだけでなく、その施策に取り組む方法や機関を明確にして現実的な行動を促す――という内容だ。

厚労省研究班員で前橋赤十字病院小児科の溝口史剛副部長は「日本では死亡事例を検証することを"犯人捜し"のように捉え、目をそむけてしまう傾向があったが、それでは死を防ぐ知見は蓄積されない」と強調。「防げる死を繰り返さないことを目指したCDRは、子どもの死を無駄にしないという社会としての道義から生まれた制度だ」と指摘する。

「何が防ぎうる死なのか」を評価することの一つをとっても、容易な課題ではない。CDRを社会に根付かせるには、方法論を確立し実践を積み重ねて制度を磨き上げるしかない。それは子どもを守り育む豊かな文化を耕していく道かもしれない。(木村彰)

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