ディズニーCEO15年ぶり交代、変革へ問われる実行力

2020/2/26 20:37
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11月に始まった「ディズニープラス」は初日だけで1000万人が登録した(事前の告知イベント)

11月に始まった「ディズニープラス」は初日だけで1000万人が登録した(事前の告知イベント)

米ウォルト・ディズニーの最高経営責任者(CEO)が15年ぶりに交代した。テーマパーク部門を率いるボブ・チャペック氏(60)が25日付で昇格し、ボブ・アイガー氏(69)は取締役会長としてCEOを支える。ディズニーは大型買収と動画配信への参入を実現したとはいえ、果実を刈り取るのはこれからだ。2年近い引き継ぎ期間を設けて、娯楽・メディアの老舗に迫る環境変化に挑む。

「なぜ今なのか」。25日の緊急会見はこの質問で口火を切った。名実ともにディズニーの顔であるアイガー氏の契約任期は2021年末。19年秋に満を持して始めた動画配信サービス「ディズニー+(プラス)」を世界で軌道に乗せ、713億ドル(約7兆9千億円)を投じて買収した21世紀フォックスの映画・テレビ部門の統合を進めてからCEOを退任すると誰もが予想していた。

アイガー氏の答えは「最もスムーズに引き継ぐため」だ。「僕がいなくなるときには彼(チャペック氏)はすべてに精通している」

1993年にディズニーに加わったチャペック氏は、映画配給やDVD、キャラクターグッズの販売部門などを経て、15年からテーマパーク部門を率いてきた。「一貫して消費者向けビジネスを担ってきた」と、チャペック氏は誇る。19年夏に開いたイベントでは集まったファンに「スター・ウォーズ」や「アベンジャーズ」を題材とする新アトラクションの構想を語りかけた。

並走期間をもうけたのは、チャペック氏の消費者感覚をアイガー氏が準備したデジタル時代のメディア基盤に実装できるかがディズニーの将来を決めるからだ。

05年にCEOに就任したアイガー氏の功績は「ディズニープラス」に集約される。同サービスに作品を提供するマーベルやピクサー、ルーカスフィルムといった製作会社はこの15年間にディズニー傘下に入った。アイガー氏はキャラクターやコンテンツといった知的財産(IP)の取得と並行して、Hulu(フールー)など動画配信のインフラへの投資も進めた。

ディズニープラスは開始から3カ月で3千万人近い会員を獲得した。ただ十分でない。足元の利益貢献が大きいテレビ事業の環境は激変し、米国の有料テレビの契約者数は19年に7%減とかつてないペースで減少した。消費者一人ひとりのデータ分析を生かせる動画配信をいち早く利益につなげていく必要がある。

競争も激しい。ディズニーの時価総額はアイガー氏のCEO在任中に約5倍となり米国のテレビ・映画業界で抜きんでている。しかしネットフリックスは同じ期間に113倍になった。アップル、グーグル、アマゾン・ドット・コム……。IT(情報技術)企業は広告を奪うにとどまらず、コンテンツへの投資を積み増し、娯楽・メディア産業そのものへと触手を伸ばす。

CEO交代の会見後に米経済番組の取材に応じたアイガー氏は会社を離れた後の計画を聞かれてこう答えた。「ディズニーランドに行きたいね」。夢の国を心から楽しめるかどうか、チャペック氏とともに走るこの2年が正念場だ。

(シリコンバレー=佐藤浩実)

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