災害ケースマネジメントを標準に、被災者支援は伴走してこそ

風紋
2020/3/1 2:00
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被災者支援者が集まった災害ケースマネジメント構想会議(宮城県石巻市)

被災者支援者が集まった災害ケースマネジメント構想会議(宮城県石巻市)

1月26日。宮城県石巻市渡波の高台の寺、洞源院で、「災害ケースマネジメント構想会議」が開かれた。

洞源院は東日本大震災の発生後5カ月間、避難者を最大で400人受け入れた被災者支援ゆかりの地。県内外から弁護士や医師、被災者支援団体が集い、被災者の生活再建に現実に横たわる課題を提示し合った。

震災から9年の歳月が流れても、壊れたままの自宅で生活を続ける「在宅被災者」。社会との隔絶状態が長期にわたり、持病の進行に気づけぬまま悪化する人、仮設住宅から災害公営住宅に移った後、家賃が急激に上がり退去を余儀なくされている人……。

土木工事的な復旧復興が被災地を覆う中、弱い立場の高齢者や障がい者、生活困窮者を襲う二次被災といえる深刻な問題と解決に向けた活動も相次いで報告された。2018年の西日本豪雨、昨年秋の台風被害の現場に駆け付けた支援者の報告にも一つとして同じパターンはなかった。

「被災者一人ひとり異なる必要な支援を行うために、個別の被災状況・生活状況などを把握、支援策を様々に組み合わせた計画を立て、連携して支援する」。日弁連災害復興支援委員長の弁護士、津久井進さん(50)が規定する「災害ケースマネジメント」。各地の被災地で、民間の被災者支援団体、個人が続ける活動にその実践を見てきた。

福島県南相馬市などで原子力発電所事故後、避難を続ける住民からよろずに相談を聞き、留守宅の草刈りなど、被災者が抱える困り事を解消する取り組みを続ける団体がある。

甚大な津波被害を受けた宮城県石巻市で家族を亡くし深刻な心の傷を負った子ども、子どもを失った悲しみに苦しむ親に向き合い、真の心の復興を目指し日々活動する人たちがいる。

津久井さんは1月末に「災害ケースマネジメントガイドブック」を出版。津久井さんは実践事例紹介と同時に災害制度での行政の縦割りと、制度の間に空く隙間に落とされる被災者の行く手を阻む「申請主義」を批判する。「初期救助は危機管理課、避難所運営は生活福祉課、仮設住宅管理は住宅課と分かれ、被災者はたらい回しの渦中に置かれる」(津久井さん)

各地で災害に襲われ、心身ともに疲れ果てた被災者に対し、行政が「申請主義」という高い壁を作り、生活再建の行く手を阻む現実がある。「罹災(りさい)証明から始まり、生活再建の支援制度もあっても被災者が申請しなければ『災害さえもなかった』ことになってしまう」(津久井さん)。行政の縦割りと申請主義を克服するために民間の伴走支援が重要さを増す。

被災者には一人ひとり築いた過去があって現在を生き、未来を描く。一つとして同じ生きざまはない被災者の生活再建を支援することを社会の標準にしたい。(小林隆)

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