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「放置船」全国7万隻 目立つ所有者不明、犯罪悪用も

全国の漁港などで放置された船が住民や漁師らの悩みの種になっている。漁の妨げとなり、災害時には流失して二次被害を呼ぶ恐れもある。放置船が覚醒剤の密輸に使われたり、不正に転売されたりする犯罪も発覚した。国が2022年度の「放置船ゼロ」を掲げるなか、自治体の撤去作業は進んでいない。

長崎市内の埋め立て地「皇后島」の一角に、赤銅色のさびに覆われた廃船が浮かんでいる。廃船の周りにはアサリを捕りにくる人がいるほか、写真映えスポットとしても取り上げられた。周辺を散歩する広田隆生さん(80)は1月下旬「いつ崩れるか不安。子どもが誤って近づかないといいが」と船を眺めた。

長崎港湾漁港事務所によると、船は1998年に現在の場所に移動してきた。所有者は関西の企業で県による繰り返しの撤去要請にも「資力がない」の一点張りで20年以上放置されてきた。その後、会社は解散。関係者とは連絡が取れない。

国土交通省や水産庁が4年ごとに行う実態調査では、全国の漁港や港湾、河川に約7万隻(2018年時点)の放置船がある。国は22年度までにゼロにする目標を掲げ、自治体に係留場所の整備などを促している。18年までの8年間で計3万隻弱しか減らず、目標達成は厳しい情勢だ。

長年放置され、自力航行できない「沈・廃船」に限れば、14年から1千隻増えて約1万隻となっている。所有者不明の船が2割を超えるという試算もある。行政が強制撤去するには手続きのための時間、解体費用がかかり、簡単には進まない。

長崎県内の51漁港にある放置廃船は18年末時点で363隻に上る。約6割の218隻が所有者不明だ。廃船の引き取りをうたう業者が使える部品だけを抜き取ったまま、置き去りにすることも少なくないという。

沖縄県の那覇地区漁業協同組合の山内得信組合長は「陸揚げされた廃船15隻が約1千平方メートルの面積に積み上げられており、漁協の運営にも支障が出ている」。沖縄県内の27漁港には昨年5月時点で490隻の放置船がある。調査方法を変更したために単純に比較はできないが、15年から141隻増えた。県漁港漁場課は「毎年新たな放置船が見つかり、撤去が追いつかない」と頭を抱える。

放置船が犯罪に悪用されるケースも出てきた。福岡県警などが昨年12月に覚醒剤約600キロを押収した事件では、宮崎県内で放置されていた船が運搬に利用されたという。捜査関係者は「放置船が犯罪に使われると、乗船者を特定するのが難しい」と警戒する。

警視庁公安部は2月20日、中古漁船をロシアの業者などに無許可で販売したとして、北海道根室市の自営業の男(67)を古物営業法違反(無許可営業)の疑いで釧路地検に書類送検した。男は約20年前から、漁師が使わずに放置していた漁船100隻以上を転売し、年間で数百万円の利益を得ていたという。漁船は日本近海での密漁などに使われた可能性がある。

放置船は津波や洪水などで流され道路を塞ぐなどの二次被害を起こす恐れがある。広島大の土田孝特任教授は「南海トラフ地震に備えるためにも撤去は急務。自動車の車庫証明のように取得時に係留場所の確保を義務づける制度の導入を検討すべきだ」と指摘する。

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