今日も走ろう(鏑木毅)

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情熱を燃やし続けるコツ 自己成長の喜び大切に

2020/2/27 3:00
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正月の箱根駅伝を終え卒業を控えた大学4年生は大別すると、これで競技から身を引く者、実業団選手としてさらに励む者の二手に分かれる。陸上競技を引退する学生にとって、箱根駅伝で培ったマネジメント力や、プレッシャーの中で己を見失わず力を発揮した経験は生涯を通して大きな財産になるだろう。

一方、競技を続ける選手は学生時代ほど注目を浴びる機会が少なくなる。そのためかどうか、わずか数年で競技から離れていくランナーが多いように感じる。実業団の選手はオリンピックや世界選手権などの国際舞台は存在するものの、箱根駅伝のような身近に存在する華やかな舞台と比べれば、ハードルが非常に高くなりモチベーションは維持しにくい。

実際、服部勇馬、大迫傑、設楽悠太、井上大仁といったいま活躍している有力選手は学生時代から箱根駅伝を一つの通過点と位置づけ、箱根の先のビジョンをいち早く描き続けていたという。

最近、ある指導者から「一つのことに無我夢中で集中できるのはせいぜい4年間」という話を聞いた。箱根を走ったランナーが競技に取り組む高いモチベーションを保つことの難しさ、さらにいえばオリンピックに連続で出場する難しさなどとも通じる話といえそうだ。

世界一をめざし走ることに全身全霊をささげていた全盛期(41歳のヨーロッパアルプス合宿)

世界一をめざし走ることに全身全霊をささげていた全盛期(41歳のヨーロッパアルプス合宿)

私自身がこれまで最も競技に集中した時期は、UTMBで世界一を本気で目指していた39歳から42歳までの4年間だった。あの時ほど一心不乱に走ることに集中した時期はなく、当時はずっとこの気持ちでいつまでも努力できるものと思っていた。だがその後は体力的な低下に加え、過度のプレッシャーとストレスのせいで湧き上がるような気迫を出せなくなり次第に大舞台から足が遠のいた。人間が夢中になれる時間にも限りがあるのだ。

国民的行事となった最近の箱根駅伝で注目されるランナーのストレスは計り知れないものになっている。大勢のメンバーから選抜される重圧も大きい。そのため他人との比較ばかりにとらわれ、自分が成長する純粋な喜びを忘れてはいないだろうかとふと心配になることがある。

学生時代、箱根駅伝メンバーの当落線上をさまよって私は、ライバルの故障にひそかにほっとするほど精神的に病んでいて、そのような視点を全く見失っていた。出場できるか否かに一喜一憂するのでなく、自身のめざすより高い頂を見据えながら、故障や力不足で走れない時期は次へのステップの準備と気楽に考えることも大切だ。

心からこのように思えるようになったのも、実は全盛期を過ぎてからのこと。もっと早くに気付いていれば私の戦績もまた違ったものになっただろう。51歳となっても現役選手として日々トレーニングし、今なお成長する創造的な楽しさを感じている。この週末には東京マラソンが開催される。新型肺炎の影響で一般参加がなくなったけれど、東京五輪マラソンの残る1枚の切符をめぐり、かつての箱根ランナーがしのぎを削る。彼らの走りが現役の学生や今回東京を走れなかった人たちに「もっと先を見よう」という強いメッセージになるような手に汗握る熱戦を期待したい。(プロトレイルランナー)

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