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サイバー保険が世界で拡大 5年後、200億ドル市場に

CBINSIGHTS
データ漏洩やネット侵入などサイバーリスクに備える「サイバー保険」に注目が集まっている。サイバーリスクは複雑で、先行きが見通しにくい面もあるものの、2025年には市場規模が200億ドルに達するとみられている。スタートアップ企業も積極的に参入している。CBインサイツがサイバー保険の市場を分析した。

派手なサイバー攻撃がここ数年相次いでいるため、あらゆる業界のあらゆる規模の企業がサイバー攻撃に対する不安を抱くようになっている。英保険会社ヒスコックスがサイバー攻撃の備えについて調べたリポートによると、米企業の半数以上が19年にサイバー関連の事故があったと回答した。独保険大手アリアンツがリスク管理の専門家2700人を対象に実施した聞き取り調査でも、サイバー問題が企業にとって最大のビジネスリスクだった。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

従来の保険ではデータ漏洩やネットワーク侵入などのサイバーリスクは補償されない。企業はこうした攻撃を防ぐためにサイバーセキュリティー技術に多額の費用を直接投じる一方、攻撃を受けた際に自社を守るためにサイバー保険にも加入するようになっている。

「私たちを含む誰もが、サイバー保険で何が補償されるかを実際にはよく分かっていない」――米著名投資家ウォーレン・バフェット氏、18年。

こうしたリスクは複雑で、過去の請求データも乏しいため、サイバー保険市場には不確実な面もある。もっとも、まだ初期段階にあるこの市場の規模は25年には200億ドル(約2兆2000億円)に達するとみられており、保険会社にとっては大きなチャンスとなる。

サイバー保険市場の現状

サイバー保険への加入はここ数年で大幅に伸びている。米国保険監督官協会(NAIC)によると、18年の米国の元受け保険料は35億ドルを突破した。

それでも、18年のサイバー保険料は6740億ドルを超える米損害保険業界全体の1%にも満たなかった。

サイバー保険は比較的急成長している市場だが、保険会社はこの分野における広範な専門知識や経験がない。このため、多くの保険会社は慎重姿勢を崩しておらず、サイバー保険をまだ中核事業に据えていない。

サイバー保険で首位のスイスの保険大手チャブでさえ、元受け保険料の総額に占めるこの保険の割合は1.7%にとどまる。他のサイバー保険上位10社もほんのわずかだ。一方、英ビーズレーや米BCSなどいくつかの中堅専門保険会社ではかなり高い。

保険各社はサイバー保険の提供でも異なる戦略を採用している。米国でサイバー保険を提供している推定500社のうち、損害保険や一般賠償責任保険など他の保険とセットで提供している企業は96%を占める。チャブはこの分野でも首位に立ち、セット保険でサイバー保険3億2000万ドルを引き受けている。

単独型のサイバー保険では仏アクサ(2億5600万ドル)、米AIG(2億3200万ドル)、米トラベラーズ(1億1300万ドル)、ビーズレー(1億100万ドル)の4社で63%を占めている。BCSや米リバティ・ミューチュアルなどはどちらも手がけており、単独型とセット型の双方で上位10社以内に入っている。

サイバー保険は高収益

サイバー保険はまだ成長途上の部門だが、加入者から集めた保険料に対する支払った保険金の割合を示す「損害率」の平均が他の保険商品よりも低く、多くの保険会社にとって高収益だということが示されている。

サイバー保険の損害率が低いのは、不確実性が高いという特有の性質により保険料が比較的高く設定されているためだろう。もっとも、損害率は保険会社によって大きく異なる。

サイバー攻撃は壊滅的な被害を及ぼすため、1度発生しただけでも保険会社の年間損害率に大きく影響する。リスクの見極めが得意な保険会社もあるが、運が果たす役割が大きく、バフェット氏のこの市場への認識はある程度的を射ている。サイバー保険はまだ比較的新しい商品であるため、リスクが高まって収益性が下がるのは先の話だろう。

サイバー保険の先行き

経済のさらなるデジタル化に伴い、サイバー攻撃のリスクや損害の可能性はますます増えるだろう。これは保険会社にとってさらなるチャンスになる。

市場の需要と現時点での収益性の高さから、既存の保険会社はこの市場での存在感を拡大し続ける公算が大きい。

スタートアップ企業もサイバー保険市場への参入を積極的に狙っている。19年に多額の資金を調達したのは、保険の販売や査定など保険会社の業務を担う管理総代理店(MGA)と、BtoB(法人向け)にサイバーリスクの分析を手がける企業だった。MGAには米コーリション(Coalition、資金調達額5000万ドル)、米コーバス(Corvus、4600万ドル)、BtoBのサイバーリスク分析会社には米アルセオ(Arceo、3700万ドル)、米サイバーキューブ(CyberCube、3500万ドル)などがある。

この市場は複雑なため、既存の保険会社は引き受けや請求業務で、引き受けを扱うMGAやBtoBの分析会社など高度な専門性を持つスタートアップを活用するようになるだろう。

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