NYダウ1031ドル急落、世界株安連鎖 感染拡大に身構え

【ニューヨーク=宮本岳則】世界の金融市場が新型コロナウイルスに身構え始めた。アジア・欧州株安の流れを引き継いだ24日の米株市場では、ダウ工業株30種平均が急落し、終値で下げ幅は1000ドルを超えた。下げは2018年2月以来の大きさだ。米国債など安全資産が買われ、米長期金利は過去最低水準が視野に入る。経済や企業業績への影響がよめないなか、投資家は一斉にリスク回避の動きに出た。
世界の株式市場は売り一色となった。新型ウイルスの感染拡大が確認されたイタリアでは、FTSE・MIB指数が前週末比5%超の下げとなり、約1カ月ぶりの安値をつけた。ドイツやフランスの主要株価指数も同4%安となり、その流れを引き継いだ米国株も朝からほぼ全面安の展開となった。アップルやマイクロソフトなど株高をけん引してきたハイテク株の下げがきつい。ダウ平均の終値は前週末比1031ドル61セント安の2万7960ドル80セントとなった。
市場からは戸惑いの声が聞こえた。「投資家はいったん『考える前に売る』行動に出ている」。米金融大手プルデンシャル・ファイナンシャルのクインシー・クロスビー氏は24日の株安についてこう表現した。イタリアや韓国など中国以外でも感染が広がり、終息時期が見えなくなってきた。「世界経済の成長率や企業業績の見通し引き下げは避けられそうにないが、どの程度の影響が出るのか、現時点では予想できない」と話す。
年初からの株高は企業業績回復シナリオが大きな支えとなってきた。調査会社リフィニティブが市場予想をまとめたところ、米主要500社の1株あたり利益は20年1~3月期に3%増、4~6月期は6%増、7~9月期は10%増と見込む。世界景気の持ち直しで増益率が高まる絵を描いていたが、4~6月期は1月時点に比べて1ポイント程度の下方修正にとどまり、新型ウイルスの影響は織りこみ切れていない。

24日の相場波乱は回復シナリオ実現に懐疑的な見方が増えてきたことを示す。懸念の声は先週末から出ていた。IHSマークイットが21日に発表した2月の米国の総合購買担当者景気指数(PMI)が49.6と1月から大幅に低下し、好不況の境目である50を下回ったからだ。米アップルのように新型ウイルスを理由に業績見通しの下方修正を公表する企業が相次ぐ展開になると、株価は不安定になる。
リスク回避の動きは景気に左右されやすい商品市場にも波及した。ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)では24日、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物が売られ、下落率は一時5%を超えた。米ゴールドマン・サックスは「コロナウイルスの感染拡大で需要予想の下方修正を迫られる可能性がある」と指摘した。あらゆる産業で使われる銅先物の価格も下落した。
迷えるマネーが向かったのは「安全資産」と呼ばれる市場だ。長期金利の指標となる米10年物国債利回りは一時、前週末比0.12%低い1.35%まで下げ、16年7月につけた過去最低水準(1.32%)が迫る。ニューヨーク商品取引所(COMEX)では金先物が1トロイオンス1680ドル台をつけ、13年以来の高値圏にある。米ジョーンズトレーディングの上場投資信託(ETF)取引責任者デイブ・ルッツ氏は「トレーダーの間では1800ドル台を予想する声もある」と明かした。

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