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「トルネード」で復活期す オリ増井、闘争心あらわ

30代半ばで成績が落ちたプロ野球選手には、あとは下り坂を進むだけ、という冷めた視線が注がれがち。そこから全盛時の輝きと評価を取り戻すのは容易ではない。その難路を敢然と歩もうとする一人に、長年ストッパーを務めてきたオリックス・増井浩俊(35)がいる。

ベテラン増井はストッパー返り咲きへ意欲を示す=共同

リードしている最終回に登板し、試合を締める。何事もないように果たしてきた務めの難しさを痛感したのが2019年だった。自身の初戦、3月30日の日本ハム戦でいきなりつまずいた。4-2の九回に登板したが、中田翔に同点2点打を浴び、引き分けに終わる遠因をつくった。

4月7日の楽天戦でも3点リードの九回に5安打を浴びて同点に追い付かれ、榊原翼のプロ初勝利を消すことに。その後は通算150セーブを達成するなど持ち直した時期もあったが、日本ハム・大田泰示に同点3ランを浴びるなど再びストッパーの任に堪えない状況になり、ブランドン・ディクソンにその座を明け渡した。以後、ストッパーに戻ることはなく、1勝4敗18セーブ、14ホールド、防御率はプロ入り後ワーストの4.83に終わった。

直球の球威が落ちていることははっきりと自覚していた。「良かった時は真っすぐを迷いなく投げられていた。狙われても捉えられない自信があったが、昨季はそれがなくなってしまった」

勇気持ちフォーム変更に取り組む

失ったものを取り戻すために行き着いたのが、フォームの変更だった。20年の宮崎春季キャンプでは、セットポジションから左足を上げる際に腰をややひねるフォームで投げている。

若い時ならまだしも、すっかり型ができあがった段階でフォームに手を加えるのは勇気が要ること。そこで背中を押したのが「昨シーズンが一番良くなかった」という思いだった。「同じようにやっていてはだめ。勇気を持って大きく変える時だと思った」。野茂英雄ほど目立つ捻転ではなくとも、小さな「トルネード投法」に活路を見いだそうとしている。

ひとたび主要なポジションから外れた選手が信頼を取り戻すのは簡単ではない。米大リーグ、独立リーグを経て阪神に戻った藤川球児は、慣れ親しんだストッパーではなく先発で出直しを図った。目立った成績を残せず救援に回ったものの、ラファエル・ドリスからストッパーの座を奪い返すことはかなわず、中継ぎの一員に収まることになった。

しびれる場面での登板が少ないから目立たず、球威も落ちたとあって、「ピッチャー、藤川」のアナウンスに場内が沸くこともなかった。ただ、往年の輝きを取り戻そうと直球を磨き、めげずに投げ続けた結果、19年7月についにストッパーに返り咲いた。華のあるポジションに戻ったことで、ファンの評価も「火の玉ストレート」でならしたころに近いものになりつつある。

クローザーに復帰した藤川の生きざまに増井は憧れを抱く=共同

憧れているという藤川の生きざまに増井が感化されたのは当然のことだろう。「あの年(39歳)になってもクローザーができる。勇気をもらった」。通算200セーブにあと37個と迫っていることもストッパー返り咲きへの意欲をかき立てている。「150セーブを達成した時から『次は200』と思ってきた。近づけるよう頑張りたい」

最近は特定のポジションへの欲を表に出さず、「与えられたところで頑張るだけ」と優等生的発言をする選手が多い。そんな中、「一番後ろを目指してやっていくのが当然」と、敢然とストッパーへのこだわりを示す増井は、見ていてすがすがしいものを感じさせる。

同僚をライバル視し、めらめらと闘志を燃やす姿は近年のオリックスに欠けていたもの。この熱に他の選手が感化され、高いレベルのポジション争いがそこかしこで繰り広げられれば、昨季最下位からの浮上も可能かも……。ベテランの闘争心が思わぬ効果をもたらすかもしれない。

(合六謙二)

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