下船の日本人が陽性 専門家「帰路の感染リスク低い」

2020/2/23 11:30
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クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から下船した人たち(19日、横浜港)=共同

クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から下船した人たち(19日、横浜港)=共同

横浜港で検疫を受けたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から19日に下船した日本人の60代女性が2日後に発熱して新型コロナウイルスの検査で陽性となった。女性は栃木県内の自宅まで公共交通機関を利用したが、専門家は「船内での検査が陰性で無症状だったので、帰路で他人に感染するリスクは極めて低い」と指摘している。

厚生労働省や栃木県などによると、女性は14日に検体を採取され、検査結果は陰性だった。船内で発熱などの症状もなかった。現時点で新型ウイルスの潜伏期間は1~12.5日とされており、女性は厚労省の基準に従って2週間の健康観察期間を船室を中心に過ごして下船した。

ウイルスが体内に潜んでいても、ウイルス量が少ないために検出されず検査で陰性になることはある。季節性のインフルエンザでも同じ経験をする人は多い。

女性についても理由はいくつか考えられる。1つは検疫を強化した5日以前に感染し、潜伏期間が想定を超えて長かった場合だ。検体を採取した14日時点でウイルスが増殖しておらず、さらに下船まで症状が出なかったということだが、可能性としては低い。

もう1つは船内で感染防止を強化した5日以降に感染した場合だ。仮に9日に感染したとすれば検体を採取した14日は5日目でウイルス量が少なく、発熱した21日は潜伏期間ギリギリでの発症となる。

沖縄県立中部病院の高山義浩医師(感染症内科)は、女性の感染が判明する前に「ほとんどの方は感染していないでしょう。しかし発症する方が出る可能性はある」としていた。「検査の感度が100%ではなく、船内の感染対策にも限界があった」とみているからだ。

ただ、確認された感染者と過ごすなどした濃厚接触者について、政府は検査で陰性ならば隔離せず健康状態に気をつけながら自宅で過ごすように求めている。高山医師は「2週間の船内での隔離を経て検査で陰性だった乗客は、濃厚接触者より厳格な条件をクリアしている」と理解を求める。

19日には米医学誌に「今回のウイルスは無症状でもウイルス量が多く、感染力は重症急性呼吸器症候群(SARS)より強く、インフルエンザに近い」などとして対策の見直しを求める論文が公表された。

こうした無症状でも感染するリスクについて、高山医師は「そのような人は検査で誤って陰性になる可能性は低い」と指摘。そのため「今回下船した人が電車やバスで帰宅しても感染を広げるとは考えにくい」と説明する。

「船内で感染した可能性がある」として、米国やカナダなどは帰国したクルーズ船の乗客について無症状で検査が陰性でも軍施設でさらに2週間隔離している。

一方、日本の感染症法では強制的な隔離の範囲は狭められている。ハンセン病の感染力が極めて低いことが分かった後も「らい予防法」という法律に基づいて半世紀近く患者の隔離政策を続け、人権を侵害した苦い教訓があるためだ。

今回の新型コロナウイルスの感染力は強いとみられつつあるが、現時点で感染が分かった人の8割は軽症で、感染しても気づかない人がいる可能性も指摘されている。

隔離するかどうかは疾患のリスクの高さと人権のバランスの問題となる。エボラ出血熱のように致死率の高い疾患ならば、さらに隔離する必要はある。検査結果が陰性で無症状の乗客について、高山医師は「日本の法体系では帰宅後に2週間の外出自粛をお願いすることが法的な限界であり、今回のウイルスに対しては感染対策としても十分」と話している。

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