タイ憲法裁、反軍野党に解党命令 「党首の融資違法」

2020/2/21 22:12
保存
共有
印刷
その他

新未来党のタナトーン党首=ロイター

新未来党のタナトーン党首=ロイター

【バンコク=村松洋兵】タイの憲法裁判所は21日、親軍のプラユット政権を強く批判する民主派の野党「新未来党」に解散命令を出した。タナトーン党首による同党への融資が政党法違反に当たると判断した。同氏ら党幹部16人の政治活動を10年間禁じる処分も下した。憲法裁は軍の影響下にあるとされ、有力野党を排除して議会支配を固めたい政権の意向が働いたとみられる。タイは2019年3月の下院総選挙を経て、民政復帰を国際社会に印象づけていた。

解散命令を受け、タナトーン氏は同日バンコクで記者会見し、「政党がなくなっても我々の旅は終わらない」と述べた。同氏は新党の設立や国政選挙への立候補などはできなくなるが、なんらかの形で政治に関わる考えを示したとみられる。

タイのプラユット首相=ロイター

タイのプラユット首相=ロイター

一方、プラユット首相はフェイスブックに「新未来党に投票した人が代替の政党を見つけられると信じる」と投稿した。

総選挙で新党ながら約80議席を得て第3党に躍進した新未来党は、若者を中心に人気が高い。

新未来党の設立時にタナトーン氏が実施した1億9千万バーツ(約6億8千万円)の融資が政党法に違反するとして、19年12月に選挙管理委員会が憲法裁に同党の解散を申し立てていた。政党法は個人による年間1000万バーツを超える献金を禁じている。憲法裁は「新未来党に返済能力はなく通常の融資とは思えない」と説明し、融資が献金に当たり違法だと判断した。

タナトーン氏ら党幹部の16人は今後10年間、政治活動を禁じられ、国政などから排除される。ほかの下院議員は他党への移籍を求められる。既に受け皿となる政党ができているもようだが、政権側の引き抜き工作により、一部は与党に合流するとの観測もある。

下院では与党の議席数が野党をわずかに上回る状況で、プラユット氏らに対する不信任決議案の審議が近く予定されていた。野党の中では第2党の新未来党の解散に政権の意向が働いたとすれば、否決を確実にする狙いがあったとみられる。

新未来党は徴兵制撤廃や軍事費の削減を主張しており、陸軍出身のプラユット氏が率いる親軍政権は警戒していた。憲法裁は19年11月、タナトーン氏が総選挙の出馬時に選挙法が禁じるメディア株を保有していたとして、議員資格を剥奪した。

憲法裁は1月、新未来党が「立憲君主制の転覆を企てた疑いがある」とされた件で、証拠が不十分として解散命令を出さなかった。支持者の反発や国際社会に配慮したとみられるが、今回の融資問題については「合理的な解党の理由になる」(タイの政治学者)との見方も聞かれていた。

チュラロンコン大(タイ)政治学部のピット・ポンサワット准教授は日本経済新聞に「新未来党は(軍など)守旧派にとって危険な存在で、議会での力を失わせる必要があった」と指摘した。

タナトーン氏は世論調査で次の首相候補の1位に選ばれたこともあり、若者を中心に人気が高い。1月に同氏が反政権を訴えるランニング大会に参加した際、支持者ら1万人以上が集まった。今回の解散命令を受け、支持者の反発は必至だ。

欧州連合(EU)は21日「新未来党の解散はタイ政治の多元主義を後退させる」と批判する声明を発表した。米国やEUは21日も大使館の職員を憲法裁に派遣し、注視していた。14年にタイの陸軍司令官だったプラユット氏の主導で軍事クーデターが起きると、欧米諸国は非難を強めた。その際、タイとEUの自由貿易協定(FTA)交渉が凍結され、いまだ再開されていない。

電子版の記事が今なら2カ月無料

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]