いざテレワーク 先進企業に学ぶ「在宅に必要なモノ」

新型コロナウイルス対策で注目されているテレワーク。東京オリンピック・パラリンピックも控え、人ごとではなくなる人も多いのでは。テレワークを実際に実施している企業によると、自宅でテレワークをする場合に「あると仕事がはかどる」モノがあると言う。テレワークの長所や注意点なども併せて聞いた。
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2016年7月からテレワークを取り入れ、「毎日出社する必要がない会社」とうたう「シックス・アパート」(東京・千代田)。2019年11月に「テレワーク先駆者百選」として総務大臣賞、東京都からも「令和元年度 スムーズビズ推進大賞 大賞」を受賞した同社のテレワーク導入のきっかけは、東日本大震災。「夏の節電を乗り切るために、週1回のテレワークに取り組んだところ、社員に好評でした。そこで、2016年からは基本的にテレワークで仕事をするというスタイルになりました」と話すのは、同社の広報マネージャー、寿かおりさん。
それによって、オフィスを3分の1サイズに縮小。現在、神保町にあるオフィスには、フリーアドレスの10席のみ用意。オフィスを小さくして経費が削減できたため、浮いた経費を社員に還元。月1万5千円のテレワーク手当を全社員に支給している。社員は、その手当を使って自宅のPC環境や通信環境を整えたり、コワーキングスペースを契約したりしているという。

今回、新型コロナウイルスの感染の広がりを受け、多くの企業がテレワークを検討する中、すでにテレワークが日常になっているシックス・アパートに、他社からも相談が寄せられているという。そんな「テレワークの達人」に、自宅でテレワークをする場合に準備しておきたいグッズや注意点などを聞いた。
見落としがちな会社と家の違い
――自宅でテレワークをする場合にあると便利なモノには何があるでしょうか。
我が社はウェブサイト構築ソフトを手掛ける会社なのですが、それ以外の企業でもオフィスワークに関しては、インターネット回線につながったパソコンさえあれば最低限のことはできると思います。テレビ会議をするにしても、最近のノートパソコンの多くにはマイク、スピーカー、カメラが付いていますから。
ただ、見落としがちなのは「自宅で行う」という前提条件です。一人暮らしならいいですが、自宅には家族もいる。ノートパソコン内蔵のマイクに話しかけるとどうしても声が大きくなりますし、スピーカーから出てくる音声は他の家族にも聞こえてしまう。なので、テレビ会議にはイヤホンを使った方がいいと思います。
スマホにはたいていイヤホンが付属で付いてきます。そのレベルでいいんです。テレビ会議に使ってみると快適さがまったく違ってきます。

――パソコンで作業するときに必要なものは?
仕事をするということは、1日8時間をPCと向かい合って過ごすということです。「会社でもやっているから平気」と思われがちですが、家と会社は環境が違います。会社は仕事用のデスクや椅子がそろっていますが、自宅に仕事用のテーブルがあるというのは少数派でしょう。実際にはキッチンテーブルなどで代用する人が多いんです。
自宅で作業をしてみると分かるのですが、オフィスで仕事をしているときに比べてモニターの位置が低くなりがちなんですよね。ただでさえノートパソコンは画面を見下ろす形になるので、その姿勢で長時間作業をすると、体に負荷がかかってすごく疲れてしまう。
そこで、お薦めは背筋を伸ばした状態でモニターが目の高さにくるようにするグッズです。
一番シンプルなのは、外付けのディスプレーを用意すること。今なら20インチより大きなディスプレーでも1万円程度で買えます。これなら目線を高くすることができます。

外付けディスプレーが邪魔だと思うならノートパソコンのモニターを高くする方法もあります。位置を高くするノートパソコンスタンドは数千円で購入することができますが、とりあえずは雑誌などを積み重ねてその上にのせるだけでもずいぶん違います。

ただそうすると、今度はキーボードとタッチパッドの位置も高くなってしまい、使いづらい。なので、外付けのキーボードとマウスを用意したほうがいいでしょう。

スマートスピーカーはテレワークに向いている
――月1万5000円のテレワーク手当が出ているシックス・アパート。社員の皆さんが買っているグッズにはどんなものがあるんでしょうか?
社員にヒアリングしてみたのですが、飲み物にこだわる人が多かったのが印象的でした。仕事の合間にほっとするためのドリンクは必須ということなんでしょうね。お茶やコーヒーをいれる道具にこだわっている人が多いです。私も好きな中国茶を集めて飲んでいます。

最近、私が買って良かったと思ったのが、ノイズキャンセリング機能がついたイヤホン。AirPods Proを買ったのですが、これがすごく便利です。自宅って、家電の音やご近所から聞こえる音など、オフィスに比べると意外にうるさいんですよね。ノイズキャンセリング機能が付いたイヤホンならテレビ会議のときはもちろん、パソコンに向かって仕事をするときにも周囲の音を消し、仕事に集中させてくれます。

自宅で作業するときはスマートスピーカーもあると便利です。ちょっとした計算や調べ物をするために、ブラウザーを立ち上げたり計算機を取り出したりするのは面倒だし、作業も中断してしまいます。そんなときにスマートスピーカーがあると便利なんです。たとえば「47×54は?」と話しかければ、正解を教えてくれます。これ、なかなか会社ではできない、自宅テレワークならではのメリットだと思います。

会議中にブレーカーが落ちた!
――実際にテレワークを続けて感じたメリットは?
ひとつは、同僚との関係が良くなったことです。テレワークでは、よく「コミュニケーションが不足する」と言われますが、実際にやってみたら反対でした。いつも一緒にいると、ささいなことが気になってストレスを感じることってあるじゃないですか。隣の人の貧乏揺すりが気になったり、キーボードをたたく音が気になったりするという話もよく聞きます。テレワークだと、ほどよい距離感を保てるため、ストレスが軽減でき、良好な人間関係が築けるようになったと感じています。
もうひとつは、家族との関係。家にいれば、学校から帰ってきたときの子どもの顔が見られます。私は小学校5年生の子どもがいるのですが、帰ってきたときの顔色を見て、彼女の今の状況を確認できるようになりました。ワーキングマザーには、これが一番のメリットかも。
――最後にテレワークでの失敗談を教えてください。
私はネットワーク経由で会議をしている最中に、ブレーカーが落ちたことがあります。主催者として話しているときに、突然ブレーカーが落ちて回線切断。急に画面がブラックアウトしたので、参加者はびっくりしたそうです。あわててスマホで「ブレーカーが落ちました!」と伝えると、みんな大笑いしていました。ブレーカーが落ちた原因は家族が電子レンジを使ったからです。それからは、「会議中はレンジ使用禁止」という紙をレンジに貼るようにしています。

私は広報なので外出もしますが、エンジニアのような職種の場合、つい続けて仕事をしてしまうのも、自宅ならではの問題かもしれません。うちの社長は好きな音楽で30分のセットリストを作って、それが終わると休憩するようにしているそうです。
気をつけなければならないのが、運動不足。通勤は意外といい運動になっていたんですね。同僚からも「太った」という話を聞きました。だから意識して運動するように努めなければ。産業医からもその点は注意してほしいとアドバイスされています。
(文 井上真花=マイカ)
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