中国、新型肺炎巡る東南アの入国制限けん制

2020/2/20 18:29
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ASEANとの新型肺炎特別外相会合で発言する中国の王毅外相(20日、ビエンチャン)

ASEANとの新型肺炎特別外相会合で発言する中国の王毅外相(20日、ビエンチャン)

【ビエンチャン=村松洋兵、北京=羽田野主】中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)は20日、ラオス・ビエンチャンで、新型コロナウイルスによる肺炎を巡り、特別外相会合を開いた。加盟国の大半は中国人の入国を制限する措置を実施しており、中国は過剰な対策を取らないようけん制した。会合では感染防止策や治療法の情報共有、ワクチンの共同開発などの連携強化で一致したが、ASEAN内部では温度差も生じている。

記者会見した中国の王毅(ワン・イー)外相は国内の新規感染者数が減少していることを引き合いに出し、「習近平(シー・ジンピン)国家主席のリーダーシップのもとでウイルスとの戦いは順調に進んでいる」と強調した。フィリピンのロクシン外相は「中国が病気の封じ込めに強力な措置を取っていることを感謝する」と応じた。

中国は新型肺炎対策の成果をアピールするとともに、各国に入国制限措置の緩和を促した。共産党や中国企業の幹部らの往来が厳しくなり政治経済に大きな影響が出るためだ。王氏は「世界保健機関(WHO)の提言を尊重し、一刻も早く貿易と人の往来を全面的に正常に戻すべきだ」と強調し、首脳会議の開催も提案した。

特別外相会合の声明には「感染拡大防止の進展に基づき交流を再開し強化する」と盛り込まれた。中国と地理的に近く、経済の結びつきが深いASEANは表向きは対中協調を演出したが、各国の対応は分かれている。

中国に14日以内の滞在歴がある外国人(中国人含む)の入国を拒否しているインドネシアのルトノ外相は20日、ツイッターに「感染地域の退避に関する情報共有が重要だ」と投稿した。連携強化の必要性は認めるが、すぐに入国制限の緩和に応じるかは不透明だ。

シンガポールは中国のパスポートを保有する人の入国を一律で禁止している。ローレンス・ウォン国家開発相は「入国審査の際に『中国パスポートを持っているが、しばらく中国に滞在していない』と主張する人が出てくることが想像される」とし、厳格な措置の運用が必要と主張する。

一方で対中関係を重視し、緩やかな措置を取る国もある。タイのドーン外相は19日に王氏と個別会談に臨み、特別外相会合について「地域と国際社会のためになる」と持ち上げた。タイは中国人の入国を制限していない。タイには19年に過去最多の約1100万人の中国人旅行客が訪れており、観光業への打撃を配慮したものとみられる。

親中色が強いカンボジアも入国制限を取っていない。フン・セン首相は「人道問題に国境はない」として、日本や東南アジア各国が拒んだクルーズ船「ウエステルダム号」の寄港を認めた。新型肺炎の感染拡大後に外国首脳として初めて北京を訪れて習近平主席と会談し、協力姿勢を示した。

ASEANは域内の交流が盛んで、各国の対応の乱れは感染拡大を招きかねない。今後、厳しく入国制限している国が、緩やかな措置を取る国に対して渡航自粛などを打ち出す可能性もある。域内の往来が減少すれば、ASEAN全体で経済成長が減速する懸念がある。

一方、中国が積極外交を繰り広げるのは国内の動揺を抑える狙いもある。新型肺炎を理由に3月5日に開幕予定だった全国人民代表大会(国会に相当)を延期する見通しだ。延期は極めて異例で、国内では封じ込め対策に不安もくすぶる。各国が中国の対応を評価していると国内向けにアピールし、孤立感を薄める意味合いも大きい。

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