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柔道・素根、小よく大を制す 代表一番乗りの19歳

2020/2/20 18:19
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一線級がそろって出場し、21日に開幕する柔道のグランドスラム(GS)デュッセルドルフ大会(ドイツ)。五輪代表が決まるこの大一番を待たず切符を手にし、一足早く本番を見据えるのが女子78キロ超級の素根輝(環太平洋大)だ。「3倍努力」を座右の銘にする19歳は、長足の進化で代表レースをいの一番に駆け抜けた。

昨年11月のグランドスラム大阪大会で優勝、五輪代表一番乗りを決めた=共同

昨年11月のグランドスラム大阪大会で優勝、五輪代表一番乗りを決めた=共同

「(最重量の)超級でも技を連続してかけられる。そして投げきって勝てる」。そう全日本柔道連盟の金野潤強化委員長がほれ込む素根の真骨頂が出た試合が、2019年11月のGS大阪大会決勝だった。五輪の金銀銅全ての色のメダルを持つイダリス・オルティス(キューバ)を足技で崩し、延長戦で大内刈りで奪った技ありは、階級の盟主を名乗るに十分なものだった。

スピードとスタミナは十分だが、身長162センチとこの階級ではひときわ小さい。当初は海外勢の体格とパワーの前にひれ伏す試合が続いた。シニアの国外デビュー戦となった17年、ドイツでのグランプリ大会。この階級一、二を争う体格のウクライナ選手の払い巻き込みに沈んだときは「今のままじゃ無理だ」と敗北感にうちひしがれた。

身長差を利し、相手は組み手争いで漏れなく上から押さえつける奥襟を狙ってくる。許せば動きが制限され、指導ももらう。国際大会で勝ちきれず、18年のオルティスとの初対戦は指導累積で敗北。18年世界女王の朝比奈沙羅(パーク24)には直接対決で勝ち続けつつも、海外勢には体格で負けぬ朝比奈の方が通じるか。1年前まではそんな見方も少なくなかった。

しかし、「練習量は誰にも負けない」と言い切る努力家はへこたれなかった。稽古の積み重ねで身につけた、奥襟を取らせず、取らせてもすかさず切る組み手の技術。18年末からマスターズ大会(中国)、世界選手権(東京)などオルティスに3連勝し、なかでも直近のGS大阪は、指導で勝った過去2度とは衝撃も違う。組み手で優位に立てる今はどんな相手にも「冷静に自分のペースで戦える」と言い切る。

父との猛練習が柔道家としての原点。素根は「あれがあるから今がある」と語る=共同

父との猛練習が柔道家としての原点。素根は「あれがあるから今がある」と語る=共同

ハンディさえ埋めれば、技に入る切れはこの階級で群を抜く。スピード化する重量級の先端を行く柔道は、今では珍しい「スパルタ教育」で磨かれた。小学校で柔道を始めた素根を鍛えたのは父、行雄さん。毎日、道場での練習を終えても、自宅を改造した「道場兼トレーニング施設」で午後10時まで特訓を重ねた。技の入りを誤れば叱責が飛び、負ければ自宅で追加練習……。父との会話は「ほぼ柔道の話」。遊ぶ時間は皆無で「3倍努力」も、父に教わり胸に刻んだ言葉である。

主武器となった担ぎ技も行雄さんが、背の高い相手に効く、と仕込んだ左右の一本背負いが原点だ。苦しさばかりがよみがえるという当時のことも、「あれがあるから今がある」。畳を降りればおうようとした雰囲気をまとう19歳は「小さい頃から絶対に負けてはだめと言われてきた。それで勝負根性はついた」。勝てば代表内定だったGS大阪では重圧をはねのけ、女子日本代表の増地克之監督に「己に打ち勝った」と言わしめた。

誰よりも厳しかった父に五輪切符を報告すると、大いに驚いていたという。「本当に現実になるとは、と。厳しい世界なんで」。父の思いを乗せ、20歳で上がる日本武道館の畳。女子個人戦の大トリで「小よく大を制す」柔道の神髄を披露する日が刻一刻と近づく。

(西堀卓司)

2000年シドニー大会から5大会連続で五輪の表彰台に乗っている女子78キロ超級の日本勢。ただ、金メダルとなると04年アテネ大会の塚田真希を最後に遠ざかる。女子が正式種目となった1992年バルセロナ大会以降、旧72キロ超級を含め最重量級の金メダルはこの1つと、海外勢のパワーに押されがちだ。
 最大のライバルはやはり12年ロンドン五輪女王の大ベテラン、オルティスだろう。左組みにスイッチするなど柔軟に戦い方を変化させ、相手への指導を引き出すのもうまい試合巧者。素根には3連敗中だが、五輪本番でどんな手を打ってくるか、油断はできまい。
 世界ランクが最高位の選手で20位台と出場権も危ういものの、怖いのは中国勢。バルセロナ以来五輪7大会全てでメダルを獲得、優勝も4度を誇る最重量級大国は、素根との対戦実績が少ない選手も多く不気味な存在だ。

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