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量子コンピューター開発支える職人技

米国のグーグルやIBM、中国のアリババ集団――。世界の名だたる企業がスーパーコンピューターの計算能力をはるかにしのぐ量子コンピューターの開発に躍起になっている。実現までに10~20年はかかるとみられるが、スパコンで1万年かかる計算を3分20秒で終えたとする研究成果を2019年秋にグーグルが発表して世界を驚かせた。

量子コンピューターで使用される1センチ角のチップ。極低温で動作させるため特殊なケースに入れ冷凍機に収められる(埼玉県和光市の理化学研究所)

「夢の計算機」というだけあって、内部の機器は一級品ばかり。研究現場からの引き合いに応え、製造現場も活気づく。未来を支えるのは最新鋭の大工場とは限らない。各地を訪ねてみると、工芸品のような部品が職人らの手で生み出されていた。

世界で約7割のシェアを占めるフィンランドのブルーフォース社の冷凍機。量子コンピューター研究に不可欠な極低温をつくり出す(ヘルシンキ)

黄金色にきらめく配線が絡み合う。「量子力学」という不思議な法則で成り立つ世界をつくる冷凍機だ。強大な計算能力を引き出すのにほぼ絶対零度(セ氏約マイナス273度)まで冷やす。6~7割の世界シェアを握るのが、従業員200人ほどのフィンランドのブルーフォース社だ。IBMなども使うという。装置の造形美は北欧ならではの美意識からかもしれない。

ニオブチタンを独自技術で直径1ミリ以下に加工した超電導ケーブル(北海道池田町のコアックス池田工場)

日本で培われてきた「ものづくり」の力も存在感を示す。極めて低い温度で電気信号をやり取りするケーブル。従業員が20人足らずのコアックス(横浜市)が世界の市場をほぼ独占している。北海道池田町の工場では、硬くて加工が難しい材料を直径1ミリメートルほどまで引き伸ばす。まさに「町工場の職人技」(同社の笠井荘一さん)だ。

「泥臭い手作業で、最新技術を支えている人たちがいると知ってほしい」と話すのは川島製作所(川崎市)の川原祐紀さん。量子コンピューターのケーブル接点にも使われる極小コネクターを作る秋田県鹿角市の工場では、作業員たちが顕微鏡をのぞきながら黙々と手を動かし続けていた。

顕微鏡をのぞき込みながら、小さいもので太さ1ミリに満たない部品を組み立てる(秋田県鹿角市の川島製作所秋田工場)

各地で作った装置や部品が研究現場で量子コンピューターに生まれ変わる。日本では理化学研究所や東京大学などが実用化を目指した研究を進めている。

(文=科学技術部 張耀宇、写真=柏原敬樹、三村幸作、淡嶋健人)

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