韓国航空業「4重苦」 新型肺炎や日韓対立など
前期は上場5社が営業赤字

2020/2/19 21:00
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韓国の仁川国際空港に着陸した機内でマスクをつける乗客=ロイター

韓国の仁川国際空港に着陸した機内でマスクをつける乗客=ロイター

【ソウル=細川幸太郎】韓国航空業界の苦境が続いている。前期は大韓航空を除き上場する6社のうち5社が営業赤字になった。そこに新型コロナウイルスの感染拡大が追い打ちをかけている。中国路線の運休が広がり、アシアナ航空は経営幹部の報酬カットや全職種を対象に無給の休職を実施する。日韓関係の悪化や供給過剰、ウォン安とあわせた「4重苦」から脱却する道筋はみえにくい。

「非常経営計画」――。アシアナ航空は18日、こんなタイトルのメッセージを韓昌洙(ハン・チャンス)社長名で社内外に発表した。韓社長は「新型肺炎流行による莫大な営業赤字を記録する危機状況に直面しており、全社レベルの対策が必要だ」と強調した。

当面、社長が40%、役員が30%、管理職も20%の報酬を減らす。全職種を対象に10日間の無給休職も実施し、中国便の不振や旅行需要の低迷に対応する。社長を含む全役員38人が辞表を同社長に預けて「役職を賭して危機を克服する」との姿勢を示した。

アシアナは新型肺炎の流行前と比べて中国路線の運航便数が8割、東南アジア路線が3割弱減少しているという。中国と東南アジアはそれぞれ同社の売上高の2割弱を占めており、単純計算で売上高が2割程度落ち込む。欧米路線を拡充してきた大韓航空との注力地域の違いが響く。

アシアナは新型肺炎の流行以前から経営不振に陥っていた。2019年12月期単体の最終損益は6727億ウォンの赤字(前の期は963億ウォンの赤字)と赤字幅が拡大した。1月下旬以降は中国路線のほか旅行需要全体が低迷し、業績悪化に歯止めがかからない状態だ。

同社を巡っては、19年4月に錦湖(クムホ)アシアナグループが資金繰り確保のために売却すると決定。同年12月には韓国建設大手のHDC現代産業開発に2000億円超で売却することで合意し、20年4月をメドに売却手続きを進めている。足元の業績悪化で経営再建策が揺らぐ可能性もある。

近距離の国際線に収益を依存する格安航空会社(LCC)各社も挽回策がみえない。

LCC大手の済州(チェジュ)航空は12日付で李碩柱(イ・ソクジュ)社長が「危機経営体制への移行」との声明文を発表。その中で「航空業界は供給過剰に加えて韓日関係の悪化に伴う危機的状況にあり、さらに感染症で旅行需要が萎縮し企業の存続を脅かしている」と語った。

李社長の言葉はLCCの苦境を端的に示す。韓国には規制緩和によって国際線を運航するLCCが6社もあり価格競争が激しい。国土が狭いため国内線より国際線が中心で、特に近距離の日本と中国が主な路線だった。そこに19年7月以降の日韓対立によって日本便の旅客が大幅に減少。新型肺炎で中国便の多くが休止を迫られている。

日中路線の特殊要因とは別に「供給過剰」という構造問題もある。もともとは大韓航空とアシアナ航空の2社寡占だったが、規制緩和によって2005年に済州航空が誕生。その後はLCCが次々に参入し、激しい価格競争が始まった。

さらに19年11月には東北地方地盤のフライ江原(カンウォン)が就航。20年には中部の清州国際空港を拠点とするエアロK航空と、ソウル近郊の仁川拠点のエアプレミアというLCC2社の新規参入も控えている。地元自治体や財界が支援する新規LCCが参入すれば韓国の航空会社は計11社に増える見通しだ。

需要低迷を受けて航空チケットの価格下落も止まらない。ソウルと東京や大阪を結ぶ片道料金が1000円を切るケースもある(空港使用料など除く)。採算度外視で乗客をかき集めざるを得ない状況だ。

韓国政府は17日、LCC向けに最大3000億ウォン(約280億円)の緊急融資を実施すると発表した。市場では急場しのぎとみられており、株価の反応は限られた。このままでは業界再編が進む前に財務基盤の脆弱なLCCから破綻していく恐れもある。

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