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海外馬券、遠征積極化で売り上げアップ 地域で格差も

2020/2/22 3:00
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2019年に過去最多の日本調教馬が海外レースに出走するなど、競馬界で海外遠征への熱が年々高まっている。20年も早速、サウジアラビアで新設された1着賞金1000万米ドル(約11億円)の高額レース、サウジカップ(29日、ダート1800メートル)に2頭の日本調教馬が出走する。

海外遠征の積極化と比例して、日本中央競馬会(JRA)の海外馬券の売り上げも年々増加。だが、各レースの売り上げに格差が目立ってきた。際立つのはオーストラリアのレースの不振。こうした状況を受け、海外馬券の発売に必要な農林水産相の指定から豪州のレースが多く外されるなど、見直しも進む。

昨年チャンピオンズカップを制したクリソベリル(左)はサウジCに出走予定だ=共同

昨年チャンピオンズカップを制したクリソベリル(左)はサウジCに出走予定だ=共同

中央所属馬の海外出走、19年は過去最多の50頭

サウジCの海外馬券発売はないが、世界最高賞金のレースということもあり、話題を集める。開催日には賞金総額約2億8000万円のロンジンターフハンディキャップ(芝3000メートル)などの前座のレースも組まれる。

日本からはサウジCに19年の最優秀ダートホース、クリソベリル(牡4、栗東・音無秀孝厩舎)、過去に国内のG1級で5勝を挙げるゴールドドリーム(牡7、栗東・平田修厩舎)の2頭が出走する。前座の芝2100メートルのレースには19年春から長期にわたる海外遠征を敢行し、20年もここまで英国で調整を進めるディアドラ(牝6、栗東・橋田満厩舎)が参戦。他の前座のレースにも栗東・森秀行厩舎の2頭、マテラスカイ(牡6)とフルフラット(牡3)が遠征する。ほかにも20日にセラン(牝3、栗東・松永幹夫厩舎)がアラブ首長国連邦ドバイのG3で3着に入り、22日には豪州で日本調教馬が出走予定。年明け早々から日本の競馬関係者の海外遠征への積極姿勢が表れている。

実際、海外遠征は年々増加している。09~13年まではJRA所属馬の海外レースへの遠征は年間延べ11~20頭(出走取消、競走除外は除く)だった。14年に36頭を記録すると、以後は17年の28頭を除き、毎年30頭以上が出走。18年は41頭、19年は過去最多となる50頭が挑戦した。

19年に遠征した馬の成績は良く、ディアドラが日本調教馬として19年ぶりに競馬の本場、英国のG1を制覇(ナッソーステークス)したほか、豪州ではリスグラシュー(牝6、すでに引退)が現地伝統のG1、コックスプレートで優勝。年末の香港国際競走では日本調教馬が3つのG1を勝った。海外G1での8勝は過去最高記録となった。新型肺炎など今後の見通しに不透明感はあるが、20年もこうした傾向は基本的に続きそうだ。

「欧州>豪州」、目立つ売り上げ格差

16年10月の仏・凱旋門賞(G1)から発売が始まったJRAの海外馬券も、日本調教馬の海外遠征の積極化とともに売り上げが増えている。農相の指定した海外レースに日本調教馬が出走した場合に馬券を売るが、初めて年間を通して発売した17年の売り上げは、10レースで102億5700万円だった。これが18年には13レースで108億7800万円となり、19年は21レースで177億7400万円と急増した。

ただ、発売レース数が増えると、レースごとの売り上げの格差が目立つようになってきた。はっきりしたのは「欧州>豪州」という傾向だ。

豪州のレースの馬券売り上げは欧州と比べると少なかった(日本馬リスグラシューが勝った19年コックスプレート)=共同

豪州のレースの馬券売り上げは欧州と比べると少なかった(日本馬リスグラシューが勝った19年コックスプレート)=共同

制覇が日本の競馬関係者の悲願とされ、国内でも知名度が抜群に高い凱旋門賞の売り上げ(19年は41億5500万円)が多いのは当然だが、5億~10億円程度に達する他の欧州のレースなどと比べても、豪州のレースは振るわない。当地最大のレース、メルボルンカップこそ19年は5億7900万円だったものの、コーフィールドカップは2億8200万円、ドンカスターマイル(いずれもG1)は2億円にとどまった。

豪州のレースには発売する側にとって扱いづらく、ファンにとってもわかりづらい仕組みがある。補欠馬の存在だ。出走可能頭数を超えた場合、補欠馬も含めて出馬表を発表。内から数えて何番目という枠順もその時点で割り振る。出走可能な馬が出走を取り消した場合、補欠馬が繰り上がって出走。枠順も取り消した馬より外の番号が割り振られていた馬が、内へと詰めていく。

日本では馬の疾病や騎乗できる騎手がいなくなった場合などにのみ、出走取消が認められるが、豪州は所定の時刻までに関係者が申し出れば、出走を取り消せる。このため、レース当日の朝にならないと出走馬が確定しないケースが多い。実際に19年のドンカスターマイルとコーフィールドCでは、補欠馬の繰り上げが発生した。

出走馬の過去の成績など、予想に必要な情報を掲載するスポーツ紙なども対応に苦慮していたようで、19年末に大阪市内で開かれた記者会見では対策を求める声があった。JRAも「出走馬の最終確定が遅く、ファンに不便をかけていると感じている。豪州競馬の発売にはそれ以外にも課題がある。いろいろと考えていきたい」と回答した。

こうした事情を受け、1月に農相の指定レースが見直された。指定から外れた5競走のうち、豪州は4つを占めた。見直し前は6競走が指定されていたが、コーフィールドC、ドンカスターマイル、ジョージライダーステークス(G1)、メルボルンCが外れ、コックスプレートとクイーンエリザベスステークス(同)の2つだけが残った。

「豪州の競走は補欠馬繰り上げも含めて、日本のファンになじみの薄い点も多い。ハンディキャップ競走もあり、日本のトップホースの参戦が少ないことから、ファンの関心もあまり高くない」とJRAは農相の決定の背景を説明する。売り上げの少なさについても「売り上げはファンの関心の高さを測る要素の一つ」と指摘。指定から外れた要因となった。

売り上げの多かったメルボルンCは、これまでなかった補欠馬の仕組みを導入するとの通知が主催者からあったため、指定を外れた。出走可能頭数の24頭に3頭の補欠馬を受け付けることになった場合、JRAの発売システムでは「対応できない」ためだ。

「日本馬の評価向上に寄与」なら指定

引き続き指定されたコックスプレートとクイーンエリザベスSについては「優秀な成績を残した場合に、日本馬の国際的評価向上に寄与する質の高い競走。ファンの関心も相応に高い」とみる。こうした理由は、豪州の競走と入れ替わって新たに指定された英国のチャンピオンステークス、ダービー、エクリプスステークスの3競走、フランスのムーラン・ド・ロンシャン賞(いずれもG1)にも当てはまる。

英ダービーについては日本調教馬の出走は現時点では想像しづらい。国内にも日本ダービー(G1)という大目標があり、まだ若い3歳春の時点で負担のかかる海外遠征を選択する陣営も少ないからだ。だが「昨今は出走レースの選択肢も多様化している。先々、適性のある馬が英ダービーに挑戦することもあるかもしれない」とJRAは指摘する。出走実績がなく、今後の参戦も不透明なレースを指定するほど欧州へのシフトが鮮明だ。

海外の主催者は日本での海外馬券の売り上げに応じて手数料収入を得られるため、日本調教馬の誘致に力を入れている。今後は欧州への日本調教馬の遠征がさらに増えるかもしれない。

(関根慶太郎)

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