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リビア難民阻止へ欧州協調 武器禁輸で合意も戦闘続く

【カイロ=飛田雅則】欧州連合(EU)は17日の外相理事会で、内戦が続くリビアへの武器密輸を阻むため、加盟国の軍隊による新たな作戦を3月までに実施することで合意した。恒久停戦を実現し、地中海を渡って欧州を目指す難民を抑える狙いだ。だが、18日にはシラージュ首相の暫定政権側が攻撃を受け、同日にスイス・ジュネーブで予定されていた国連仲介の停戦監視委員会への出席を取りやめた。戦闘停止への道筋はみえない。

リビアは西部の首都トリポリを拠点とする暫定政権と、東部のベンガジに陣取るハフタル司令官の軍事組織「リビア国民軍(LNA)」の2派に大きく分裂する。ロイター通信によると、18日にLNAがトリポリの港を攻撃し、3人が死亡した。暫定政権側はこれを理由に監視委を欠席した。

EUが合意したのは船舶、航空機、人工衛星を使い、地中海で武器の密輸や戦闘員の密航を監視する作戦だ。EUの外相にあたるボレル外交安全保障上級代表は「(戦闘停止には)武器流入の阻止が重要だ」と語った。国連安全保障理事会は2011年、リビアへの武器輸出禁止を決議したが、守られてこなかった。

両派はそれぞれ様々な外国勢力の支持を受けている。EU加盟国では独立前のリビアを支配した経験のあるイタリアが暫定政権、フランスはLNAを支持し、北アフリカの産油国リビアでの利権確保を目指す。だが今回は難民阻止という共通目的で一致したもようだ。

リビアはアフリカから欧州を目指す難民の主要なルート上にある。中東のシリアではアサド政権と反体制派の戦闘が激しくなり、再び欧州への難民が増える可能性が高まっている。ユーロ圏の19年10~12月の実質成長率は前期比0.1%と低迷しており、欧州にはさらに多くの難民を受け入れる余裕がない。リビア難民の阻止が欧州経済の立て直しには欠かせない。

リビアは暫定政権を支援するトルコ、LNAを支えるロシアの呼びかけで1月12日、停戦期間に入った。だが、戦闘は散発している。中東の衛星テレビ、アルアラビーヤは18日、LNAがトリポリの西方約50キロメートルほどにある暫定政権下のザウィヤに向け進軍を始めたと報じた。LNAが同市を制圧すれば、暫定政権には大きな打撃となる。

リビアでは11年、カダフィ長期独裁政権が崩壊した後、武器が広く行き渡り、内戦で国土が分裂状態に陥った。近隣の中東諸国もカタールが暫定政権を支え、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、エジプトがLNAを支持する。

ドイツは1月19日、ベルリンに欧州や中東などの関係国を招いて会議を開き、武器禁輸を徹底し、恒久的な和平を目指すことで合意した。しかし、トルコが暫定政権支援のため1月上旬に派遣した部隊は駐留を続ける。ロイター通信は、UAEが2月中旬、LNAに物資を輸送した疑いがあると報じた。ジュネーブでは26日から暫定政権、LNAの政治指導者による和平協議が予定されるが、先行きは不透明だ。

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