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設備投資に腰折れ懸念 1~3月機械受注減少へ

日本経済をけん引してきた内需の柱である設備投資が腰折れする懸念が強まっている。先行指標の機械受注は1~3月期まで3四半期続けて前期を下回る見込み。海外経済の減速に伴う製造業の停滞が長引いている。投資の基調を左右する輸出は1月まで14カ月続けて前年を下回ったうえに、新型コロナウイルスが影を落とす。景気は内外需で逆風が強まっている。

内閣府が19日発表した機械受注統計によると、1~3月期は変動の大きい船舶・電力を除く民需が前期に比べて5.2%減る見通しだ。調査は19年12月時点で、足元で広がる新型肺炎の影響は織り込んでいない。大和総研の小林若葉氏は「実際はもっと落ち込む公算が大きい」とみる。

3四半期連続のマイナスになれば、直近の景気後退局面に重なる12年4~6月期から13年1~3月期(4四半期連続)以来のことだ。新型肺炎の流行は中国市場の需要期である春節明けも続く。コマツは山東省などの工場の稼働を2月3日から10日に遅らせた。小川啓之社長は「顧客もすぐに機械を買って仕事を始める気にはならない。常識的に考えて急に(需要が)戻ってくることはないだろう」と漏らす。

中国を起点とするサプライチェーンが寸断されることによる影響も広がりそうだ。国内の鋳物メーカーの関係者は「製品を納入しても、顧客側で他の部品が中国から来ないため機械が作れないというケースが出ている。納品の延期やキャンセルが生じ始めた」と明かす。

企業の投資意欲は肺炎の問題が広がる前から弱くなっていた可能性がある。日本工作機械工業会によると、設備投資の動きを映す工作機械の総受注額は10~12月に2590億円だった。米中貿易戦争などで販売低迷が続く自動車向けの受注が約4割減り、歴史的な低水準だ。ファナックの19年10~12月の受注は前年同期比13.6%減。山口賢治社長は「工場の自動化関連を中心に、明確に良い兆候はみられない」と語る。

日銀による19年12月の全国企業短期経済観測調査(短観)では、19年度の設備投資計画は前年度比5%増だった。増加の見通しは保ったが、伸び率は9月調査より0.3ポイント下がっている。

今後の投資意欲を左右する輸出の動きはさえない。財務省が19日発表した1月の貿易統計で輸出額は前年同月比2.6%減り、14カ月連続のマイナスだった。

内閣府が季節ごとの動きをならして試算した実質輸出数量はアジア向けが昨年12月まで2カ月続けて上がり、底入れの兆しがあった。今年は中国の春節が昨年より早かったことが1月の輸出を抑えた面はあるが、新型肺炎が影響し、足元では中国との貿易は停滞している。農林中金総合研究所の南武志氏は「中国とつながりの深いアジア向けも落ち込みかねず、輸出の底入れは遅れる」と話す。

19年の日本経済は外需が停滞するなか、個人消費と設備投資の内需が支える姿だった。両輪の一つだった設備投資を控える動きは、企業業績の先行きに慎重な見方が広がっていることを映す。本格化する春季労使交渉での賃上げも小幅にとどまれば個人消費の回復も遅れる。日本経済は当面、19年度の補正予算などに計上された巨額の公共投資頼みの構図になりそうだ。

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