アフガン和平合意へ詰め タリバン、米と「月内署名」

2020/2/18 19:30
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【ワシントン=中村亮、ニューデリー=馬場燃】アフガニスタンの和平実現に向け、米国と反政府武装勢力タリバンの協議が詰めの段階に入った。タリバンの報道官は双方が7日間にわたる「暴力削減」の履行を確認すれば、「月内に和平合意に署名する」と明らかにした。18年間にもわたるアフガン戦争の終結に向けた機運が高まっているが、治安情勢安定の基盤に欠かせない相互の信頼醸成にはなお曲折が予想される。

14日に会談したアフガニスタンのガニ大統領(右)とポンペオ米国務長官(独ミュンヘン)=ロイター

タリバンの報道官は18日までに日本経済新聞の取材に対し「米国との和平交渉が終了し問題が解決した」と言明した。別のタリバン幹部は米国と和平合意の署名式を29日に開くとの見通しを語った。カタールの首都ドーハが署名式の候補地にあがり、約25カ国に加えて国連や欧州連合(EU)の代表団を招く方向で調整が進んでいるという。

トランプ政権も協議進展を強調している。米メディアによると、国務省のアフガン和平担当特別代表ザルメイ・ハリルザド氏が17日、パキスタンでの国際会議で「おそらく最も良い平和実現のチャンスが訪れている」と強調。多くの課題があると指摘しつつも「私は慎重ながらも楽観的だ」と語った。

米国とタリバンの説明によると、和平合意は2段階で進める。米政府高官はタリバンと第1段階として「7日間の暴力削減」に合意したと説明した。双方が空爆や自爆テロ、ロケット弾発射などの暴力行為を控える。タリバン側によると、暴力削減期間は22日にも始まる。アフガン駐留米軍が合意履行の実態を監視し、米国は和平に向けたタリバンの本気度を見極める構えだ。

ただ暴力削減の定義は現時点で曖昧だ。適用地域や比較対象とする時期に加え、どれぐらいの暴力を許容するのか明確にしなければ互いの解釈がずれて合意の履行が難しくなる。合意を破った場合の罰則を明示するかも焦点だ。元国防総省高官は「タリバンはさまざまな派閥から構成されており、指導部の意向を末端の戦闘員まで浸透させられるかは不透明だ」と分析する。

第1段階の履行が確認できれば米・タリバンが包括的な和平合意に署名する。1万2000人規模のアフガン駐留米軍の段階的削減と引き換えにタリバンがアフガン政府と将来的な統治体制をめぐる対話を始める方向だ。タリバンは米国がアフガン政府の後ろ盾になっているとみなし、同国政府と公式な直接対話に応じない姿勢を示してきた。アフガン政府とタリバンが捕虜を相互釈放する方向でも調整が進んでいる。

アフガンのガニ大統領は16日まで独南部で開かれたミュンヘン安全保障会議で、米・タリバンの和平合意をめぐり「我々は大きな前進をしようとしている」と強調。ポンペオ米国務長官とも会談し、アフガン政府として合意に賛同する立場を示した。これまではトランプ政権がタリバンとの直接交渉に乗り出したことで、ガニ政権から米国が米軍縮小を優先するなどの懸念がたびたび出ていた。

ただ中東調査会の青木健太研究員は、和平構築に向けたプロセスで「タリバンが再び軍事攻勢に転じるリスクもある」と指摘する。アフガン政府とタリバンの交渉では、暴力の放棄と引き換えにタリバンに政治参加を認めることも想定されるが「双方の統治に関する考え方に隔たりがあり、道のりは不透明だ」と見る。

和平合意にこぎ着けられるかは、トランプ米大統領が今回のディール(取引)をどう判断するかもカギとなる。2019年9月には署名直前に棚上げしたが、大統領選が本格化するなかでアフガン戦争の終戦を宣言して駐留米軍縮小の道筋を付ければ外交成果をアピールする材料になる。

米国は01年の米同時多発テロ事件の首謀者である国際テロ組織アルカイダのウサマ・ビンラディン容疑者をかくまったとして、アフガンのタリバン政権を相手に戦争を始めた。

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