レバノン、デフォルト危機 返済期限目前にIMF支援要請

2020/2/18 19:00
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【ベイルート=岐部秀光】中東の小国レバノンが債務不履行(デフォルト)の瀬戸際に立たされている。経済の不振で財政が悪化し、国債の償還期限を目前に国際通貨基金(IMF)に「技術支援」を要請した。サウジアラビアとイランによる覇権争いの場となっているレバノンで、政治や社会が一段と不安定になる懸念がある。

破壊された銀行ATMの前に立つレバノンの兵士(17日、ベイルート)

ワズニ財務相は13日、3月9日に償還期限を迎える12億ドル(1320億円)の外貨建て国債について「支払いを実行するかどうかを検討している」と発言した。IMFはマクロ経済の状況について技術的なアドバイスの要請を受けたと明らかにし、支援の用意があると述べた。週内にもレバノン入りし、協議する見通しだ。

レバノンの公的債務残高は国内総生産(GDP)の150%以上に達する。ビブロス銀行のチーフエコノミスト、ナッシブ・ゴブリル氏は「政党が勢力増長の手段に財政資金を使ったため過去5年で一気に債務がふくらんだ」と指摘する。

政府はきびしい選択に直面する。無秩序なデフォルトとなれば、民間向けもふくむさまざまな債権者が強制返済の要求に向けた法的な手続きに入るとみられ、連鎖的な金融危機につながる。無理に返済を進めれば、一段の緊縮強化が避けられず、国民の反発を招く。

レバノンでは1月にハッサン・ディアブ首相が率いる新政権が発足した。新政権ではイランが後押しするイスラム教シーア派の政党ヒズボラが影響力を強めた。このため、イランと対立するサウジなどアラブの国は支援に慎重な立場だ。レバノンではイランがヒズボラを、サウジがスンニ派を支援して勢力を競っている。

レバノンは通貨を米ドルに固定する制度を維持してきた。19年後半からブラックマーケットでの闇両替が横行し、レバノンポンドの実質レートは30%以上も下がった。

資金流出をおそれる銀行は預金者の引き出し制限を導入。首都ベイルートでは怒った利用者が破壊したとみられるATMが、あちこちに放置されている。政府が苦肉の策として打ち出した対話アプリ「ワッツアップ」通話への課税方針が怒りに油を注ぎ、反政府デモが止まらない。

レバノンには隣国シリアの内戦を逃れ、行き場を失った多数の難民が暮らす。レバノン経済の破綻は同国の社会情勢を一段と不安定にし、欧州などに向かう難民を増やす可能性がある。

債権者の間でも対応をめぐる対立があるようだ。英フィナンシャル・タイムズ紙によると、期限までの全額返済を強硬に主張する英資産運用大手アシュモア・グループを、米ピムコの担当者が「無責任」と公の場で批判した。

レバノンには昨年末に日本から逃亡した日産自動車元会長、カルロス・ゴーン被告が暮らす。スキー場やワイン農場などに出資し金融資産も持つとされるゴーン被告にとってもレバノンの財政危機は打撃となりそうだ。

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