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今季Jリーグ、楽しみな五輪めざす若手の躍動

サッカージャーナリスト 大住良之

28シーズン目のJリーグが21日に開幕する。

J2に降格したジュビロ磐田と松本山雅に代わって柏レイソルと横浜FCが昇格、18クラブによる12月5日までの34節、全306試合の熱戦が始まる。

今季はビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)がJ1の全試合で使われる歴史的なシーズン。レフェリーたちだけでなく、選手も観客も慣れるまでに少し時間がかかるかもしれないが、「重大な誤審」がなくなるのは誰にとっても喜ぶべきことに違いない。

日程分断、スタートダッシュ狙う

VARと並ぶ今年の大きなトピックは「東京オリンピック」だ。7月24日に開会式、8月9日に閉会式が行われる大会期間中、Jリーグは休止となる。J1は7月4、5日の第21節で中断し、第22節は8月14、15の両日に行われる。

すなわち、シーズンはオリンピック前とオリンピック後で分断され、シーズンの3分の2がオリンピック前に行われ、第21節までの4カ月半が今季の順位に大きく影響する。どのチームもシーズン前のキャンプを重視し、「スタートダッシュ」を狙っている。

そうしたなかで、優勝候補の筆頭は川崎フロンターレだ。2017、18年とJリーグで連覇を飾った川崎は、昨季はホームでなかなか勝てず、4位に甘んじた。年間勝ち点60は優勝争いに加わっていたことを示すが、ホームでの勝ち点はわずか24。ちょうど40%の「ホーム勝ち点率」は、最下位でJ2に降格した磐田を除けば最も低い数字だった。

川崎は即戦力新人の旗手(中央)ら、生きのいい若手がどんどん伸びている=共同

鬼木達監督の4シーズン目で、主力の大半が残り、戦術も熟成してきた。そのうえ、MF三笘薫、FW旗手怜央といった即戦力の新人、そしてU-23(23歳以下)日本代表でも中心になりつつあるMF田中碧など、生きのいい若手がどんどん伸びている。アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)という大きな負担のない今季、タイトルを奪い返す可能性は十分ある。

韓国、中国、オーストラリアなどの強豪と争うACLへの参加は、競争の激しいJリーグのクラブにとって大きな重荷だ。もちろん、やりがいのある大会ではあるが、ACLを戦いながらJリーグでも序盤から首位を快走したケースは、過去10年間で2回しかない。15年の浦和レッズと17年のガンバ大阪だが、ともにACLのグループステージでは最下位。はやばやとJリーグに重点を切り替えた結果だった。

今季は、昨年のJリーグ・チャンピオンである横浜F・マリノスと2位FC東京、そして天皇杯優勝のヴィッセル神戸がACLのグループステージに出場している。チーム力だけをみれば3チームとも非常に良い状態で新シーズンを迎え、昨年よりも戦力は上がっている印象がある。とくにFC東京は得点力不足を補うためにMFアダイウトンを磐田から、そしてMFレアンドロを鹿島アントラーズから獲得してFWディエゴオリベイラとともに強力な3トップを形成、課題をクリアしたようにみえる。しかしACLとのかけもちがどう響くか。

FC東京はアダイウトン(中央)とレアンドロを獲得。強力な3トップ形成で戦力が上がっている=共同

2月8日に行われた富士ゼロックス・スーパーカップで対戦した横浜Mと神戸は、「進化する戦術」を掲げて戦力を充実させた横浜M、FWに非常に頼りになるドウグラス(清水エスパルスから移籍)を補強した神戸と、いずれもJリーグで優勝を争う力は十分ある。だがこの2チームもACLがどう影響するか、不透明だ。中国を震源とする新型コロナウイルスの広がりでACLの試合消化が不透明になっており、今後さらに無理な日程を強いられる恐れもある。

ACLプレーオフ敗退という思いがけない状況になった鹿島は、MFファンアラーノ(ブラジル)、FWエベラウド(ブラジル)、DF杉岡大暉(湘南ベルマーレから移籍)、DF奈良竜樹(川崎から移籍)、DF永戸勝也(ベガルタ仙台から移籍)など果敢な補強を行ったが、昨年から大きく変わったザーゴ新監督の戦術浸透、チームづくりが完了しておらず、序盤戦は苦戦が予想されるだけに、今季の特殊な日程を考えると不安がある。

これらの「優勝候補」に対抗するのは、サンフレッチェ広島、G大阪、そして浦和か。浦和は「下位候補」と予想する人も多いが、アルビレックス新潟から移籍した昨年のJ2得点王レオナルドの得点力を軸に上位争いに加わる力は十分ある。

柏のオルンガ(左)を止めるのはどのチームにとっても困難な仕事になりそうだ=共同

だが、今季の台風の目になりそうなのは、J2から昇格した柏だ。昨年のJ2で1試合8得点という破天荒なプレーを見せたケニア代表の長身FWオルンガを止めるのはJ1のどのチームにとっても困難な仕事に違いない。GKに昨年途中まで神戸でプレーして「Jリーグナンバーワン」と言われていた韓国代表の金承奎を獲得したのも大きい。

若手が物おじせず堂々とプレー

率いるネルシーニョ監督は、1994年のヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ)の指導以来、Jリーグのサッカーを知り尽くす大ベテラン。11年には、J2から昇格したばかりの柏を優勝させた実績の持ち主でもある。

そのネルシーニョ監督にこの四半世紀のJリーグの最大の変化は何かと聞くと、「若手が物おじせずに堂々とプレーするようになったこと」という答えが返ってきた。

そう、優勝争いも気になるが、今季最も楽しみなのは、東京オリンピックをめざす若手の躍動だ。「U-23日本代表」といっても欧州勢が半数近くを占める現在だが、Jリーグ勢が奮起しなければオリンピックで目指す成績を挙げることなどできない。1月のU-23アジア選手権では大きな痛手を受けたが、その悔しさをJリーグにぶつけ、それぞれのチームをけん引する活躍を見せることで、オリンピックへの道も開ける。

横浜M・遠藤(左)ら東京五輪をめざす若手はチームをけん引する活躍を見せられるか=共同

横浜MのMF遠藤渓太、FC東京のDF渡辺剛、鹿島のDF杉岡、FW上田綺世、川崎のMF田中、MF旗手、広島のGK大迫敬介、コンサドーレ札幌のDF田中駿汰、清水のDF立田悠悟、DF岡崎慎、名古屋グランパスのMF相馬勇紀、浦和のDF橋岡大樹など、これまでに実績のある選手たちだけでなく、オリンピックへの扉はすべてのU-23年代の選手に開かれている。

若手が躍動すれば、Jリーグはもっともっと魅力的になる。J1の最多出場記録(楢崎正剛の631試合)更新まであと2試合に迫った遠藤保仁(G大阪)や、53歳を目前にJ1初の50代出場を目指すカズ(三浦知良=横浜FC)などベテランの動向も目が離せないが、20年は例年にも増して若手の活躍に対する期待をもちたいシーズンだ。

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