全新幹線がチケットレス対応へ 東北など3月、九州も
日本国内の全ての新幹線が、紙の切符を持たずに交通系ICカードで乗車できるチケットレスサービスに対応する方向になった。JR東日本・西日本・北海道の3社は3月14日から「新幹線eチケットサービス」を始める。JR東海はJR西との同様のサービス「スマートEX」で先行しており、2022年春にはJR九州に拡大を予定する。国内旅客の出張や旅行の際の利便性が高まりそうだ。

北海道や北陸、対航空競争力強化も視野に
JR東と西、北の3社による新幹線eチケットサービスは東北・北海道や上越、北陸、山形、秋田の各新幹線を対象とする。Suica(スイカ)のほかPASMO(パスモ)やICOCA(イコカ)など計10種類の交通系ICカードで、指定席券も含めて新幹線に乗れるようになる。これまでスマートフォン専用の「モバイルスイカ」では指定席の予約や乗車ができたが、カード状のスイカには対応していなかった。

これまで年末年始や行楽シーズンには、各駅の「みどりの窓口」で新幹線の切符を買い求める長蛇の列ができていた。より手軽に購入・利用できるようにすることで、北海道や北陸など航空との競合が激しい区間でも、新幹線の競争力を高めたいとの狙いもある。
利用には事前にJR東の切符予約サイト「えきねっと」やJR西の同「e5489」に自身のスイカなどを登録する必要がある。えきねっとやe5489で指定席券や自由席券を予約すると、登録したスイカなどで新幹線に乗れる。
東海道新幹線や山陽新幹線では17年からJR東海と西がスマートEXを提供しており、JR東などでも待ち望まれていた。類似したサービスではあるが、新幹線eチケットサービスは時間をかけた分スマートEXにない機能を備えている。

スマートEXは九州へ、全国二分
1つは改札を通る仕組みにクラウド技術を採用しメンテナンスやバージョンアップをしやすくしたことだ。通常は自動改札機が交通系ICカードに記録された予約などの情報を直接処理するが、新サービスでは予約情報の管理や認証を行うセンターサーバーを構築して、自動改札機とICカードの間に介在させた。
ICカードをかざすと自動改札機がネットワーク経由でセンターサーバーに照会し、同サーバーと連携した予約サイトからの情報とひもづけて改札を通過できるようにする。改札機が情報を処理する形だとシステム更新などの際に改札機一つ一つを改修することになり時間がかかるが、センターサーバー方式なら機動的に改修がしやすい。

チケットレスの「進化」も特徴だ。スマートEXでは複数人が乗るときや子供が乗るときは、専用の券売機から紙の切符の発券が必要だった。一方eチケットサービスでは一度に6人分まで予約ができ、それぞれの交通系ICカードで改札を通れる。小学生以下の子供も子供用の交通系ICカードを使える。
JR東はeチケットサービスの導入に伴い、機能が重複するモバイルスイカの新幹線乗車サービスを廃止する。ただ、交通系ICカードの残高で自由席に乗れる「タッチでGo!新幹線」は継続する。東北、上越、北陸の各新幹線で東京から比較的距離が近くビジネス利用の多い一部区間が予約不要で乗れるサービスで、併存できるためだ。
JR東の深沢祐二社長は「22年度中に新幹線の利用の5割をチケットレスにしたい」と話す。駅の混雑が緩和し乗客の満足度向上などに効果があるほか、維持費がかかる自動券売機の台数の削減、さらにそれで空いたスペースの有効活用などにもつながってくる。

新幹線のチケットレスは3月からの東北・北海道・上越・北陸・山形・秋田と、22年春には九州まで拡大する東海道・山陽の2大サービスに分かれることになる。東北と東海道の間の乗り継ぎ利用などの需要は限られるものの、今後は2つのサービスをつないだ相互利用の実現なども課題になりそうだ。
(企業報道部 長尾里穂)
